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94%の組織が悩む「無駄なクラウド利用」解消への道:大手4社が堅牢性と利便性を両立した“成功の秘訣”

「HashiCorp Strategy Day Japan 2024」レポート

 2024年10月3日、HashiCorp Japanはオンラインで「HashiCorp Strategy Day Japan 2024」を開催した。同社の製品は、かつては先進企業の特定部門から活用が始まったが、最近では企業として一定のガバナンスを実現しつつ、セキュアで効率的なクラウド活用を実現するために活用されている。同イベントでは、HashiCorpを導入した4社の企業が導入前に抱えていた課題、導入の経緯、活用状況などを語った。

クラウド活用効果の最大化に必要な2つのアプローチ

 イベント冒頭、HashiCorp Japan Lead 小原光弥氏が登壇し、世界におけるクラウドの利用状況について解説した。2023年にPwCがグローバル企業を対象に実施した調査によると、78%の組織がクラウドを導入していると回答したものの、クラウドの投資で得られると期待していたビジネスインパクト(コスト削減、耐障害性の向上、新たな収益の創出)を実現している組織はわずか10%にとどまっていた。

 クラウド利用における具体的な課題を見てみる。コストの観点では、クラウドの利用によってシステムの複雑性が高まり、94%の組織で無駄な利用が増えて35%の支出超過につながったと報告されている。また、報告された情報漏えいインシデント10件のうち9件には、認証情報の盗難または流出があるなど、ガバナンスとコントロールが深刻化していると指摘。さらに、クラウド利用規模が拡大すればするほど、開発者がコーディングに費やせる時間が減るなど、生産性の低下も問題視されている。

 HashiCorpが顧客を対象に毎年実施している調査を見ても、日本市場における組織の76%が「クラウド技術に精通した人材が不足している」、88%が「クラウドに関する無用なコストが発生している」と回答。人材不足や無駄なコストの抑制は組織において重要な課題であることが浮き彫りになっている。

 小原氏は「事業の成長とともにクラウド活用を効果的に拡大するためには、技術スキルを補う自動化施策や包括的なアプローチが必要になります。なかでも重要となるものが『アプリケーションバリューチェーン』と『標準化アプローチ』です」と話す。

HashiCorp Inc. Japan Lead 小原光弥氏

 1つ目に挙げたアプリケーションバリューチェーンは、アプリケーション、インフラストラクチャ、セキュリティ、モニタリングからなる一連の流れを指し、それぞれにライフサイクル管理がある。分かりやすい例がアプリケーションのライフサイクル管理だ。また、インフラストラクチャのライフサイクル管理は、プラットフォームチームがインフラを構築、デプロイし、それらを管理するためのワークフローや機能を有する。セキュリティのライフサイクル管理は、運用・セキュリティチームがシークレット(人以外に紐づく特権認証情報)や顧客データなどを保護し、安全に接続するためのシステム整備に重点を置いている。

 2つ目に挙げた標準化アプローチでは、アプリケーションの実行に必要なクラウドリソース、シークレット、ネットワークなどの選択肢と柔軟性を保ちながら、クラウド活用の複雑さを軽減することを目的とする。

 HashiCorpのインフラストラクチャクラウドはSaaS型のHashiCorp Cloud Platform(HCP)またはセルフマネージド型で提供されており、各種プロダクトにより先述したインフラストラクチャとセキュリティのライフサイクル管理を担うことができるものだ。

 こうした製品から具体的にどのような効果が得られるのか。以降は、HashiCorpの製品を導入した企業が登壇し、導入した背景や経緯、どのようにHashiCorp製品を自社環境に組み入れたのかを解説する。

次のページ
トヨタコネクティッド:3大課題を解決したHCP Vault Dedicated

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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

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