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広島からデジタル変革に挑む!ひろぎんHD、NECらが示す地域DXに向けた“産・官・学・金”共創の道筋

「AWS デジタル社会実現ツアー 2024」レポート

 AWSが開催した「デジタル社会実現ツアー 2024」は、地域創生と社会課題解決の実現策を「AIとデジタル×官民学金の共創」によって見出すことを目指した全国規模のイベントだ。2024年11月11日に広島で開催された同イベントでは、政府自治体や民間企業、スタートアップ企業、教育機関など多方面からキーパーソンが集い、様々な議論が展開された。今回はその中から、広島からデジタル社会の実現に挑む4者が「官民学金連携で実施できる具体的な施策」をテーマに行ったパネルディスカッションの模様を紹介する。

“産官学金”4者の取り組みに見る地域DXの成功例

 少子高齢化や老朽化する社会インフラ、地方経済の衰退など、地域における課題は山積している。これらを解決するためには、行政や民間企業、銀行など様々なステークホルダーたちが連携し、知恵を絞っていく必要があるだろう。それぞれの組織で立場や強みが異なる中、自身はどう行動を起こしていくべきか、また自組織はどのようなことを期待されているのか。こうしたことを把握するためにも、積極的な情報の受発信やコミュニケーションが不可欠といえる。このような現状を踏まえ、各パネリストが自組織における取り組みを紹介した。

NEC:5ヵ年計画で広島県に情報職を設置、イノベーション促進も

 まず口火を切ったのはNECの桑原義幸氏。米国企業で40年以上IT分野の研究やコンサルティング業務に携わり、金融庁を経て2011年から広島県情報戦略担当部長を務めたITの専門家だ。任期中は自治体の情報人材の確保・育成に課題を感じ、5ヵ年計画で広島県に情報職を設置。さらに、県市町の協働によるデジタル人材の確保と育成・共有に取り組んで2年目を迎える。

 このような取り組みを行う中で、「広島県がさらに発展するためには民間の力が必要だ」と認識し、10年前から「シリコンバレー訪問商談プログラム」を実施していると桑原氏。実際にシリコンバレーに赴き、参加企業のニーズに合う米国企業との個別商談や展示会への参加、先進的な企業への訪問などをコーディネートするものだ。「広島県内の民間企業に刺激を与えつつ、ビジネスチャンスとなるコラボレーションの“緒”を見つけてもらうことが目的だ」という。

日本電気株式会社 エグゼクティブストラテジスト (元広島県情報戦略担当部長) 桑原義幸氏

ひろぎんホールディングス:地域DX支援に向け4つの施策で社内改革を

 広島銀行を傘下に持つひろぎんホールディングスで、2016年からDX統括部執行役員を務める石原和幸氏は、現場での経験をもとにグループ横断のDX推進に携わっている。2024年4月からスタートした中期経営計画に合わせて「DX戦略」を策定し、自社はもとより地域の顧客およびステークホルダーのDXを支えることを宣言した。この実現に向け、「1, DX推進/ガバナンス管理体制」「2, DX人財」「3, DXシステム基盤」「4, データ利活用」を軸に社内構造改革に取り組んでいるところだと石原氏は話す。

 具体的な成果として、広島銀行が提供する公式アプリ「ひろぎんアプリ」の提供、2つの地域における中小企業のIT化を支援する子会社「ひろぎんITソリューションズ」の設立、DX認定の取得やシステム内製化のチームによる実績などが紹介された。石原氏は、「現在は拡大進化のフェーズと位置づけ、引き続き領域を拡大しながら着実に取り組んでいく」と語った。

両備システムズ:岡山発信の“地方発医療AI”を開発

 続いて、岡山に本社を置き、交通・運輸・情報・生活関連事業を手掛ける両備グループのICT部門を担う両備システムズでメディカルAI推進室の室長を務める大戸彰三氏が自社での取り組みを紹介。同社が公共施設や民間企業など幅広くITサービスを提供する中で、大戸氏は医療分野でのシステム開発に従事し、現在はAI研究開発に携わっているという。

 具体的な取り組みとして大戸氏は、両備システムズと岡山大学病院との共同研究により、内視鏡検査の画像をもとにAIで早期胃がんの深達度を判定し、医師の診断補助を行う「早期胃がん深達度AI診断支援システム」の開発について説明した。2019から2021年にわたる岡山県次世代産業研究開発プロジェクト事業として採択され、2024年3月には販売認証を取得。「岡山発信の地方発医療AI」という先駆的な取り組みとして、地元のAI産業の活性化に貢献することが期待されている。

株式会社両備システムズ ヘルスケアソリューションカンパニー メディカルAI推進室 室長 大戸彰三氏

みらい:縁や思いを動力に地域課題の解決を支援

 みらいの藤井健史氏は、中小企業・行政向けのDX・デジタル化支援事業に従事しつつ、熊本県のデジタル戦略専門員として同県のDX推進に関わる立場だ。みらいは完全リモート勤務を採用しており、全国に14ヵ所のサテライトオフィスを擁している。縁や思いのある地域の課題解決を遠隔から支援するユニークな会社だ。デンマークの様々なバックグラウンドを持つ人が学び合うフォルケホイスコーレをモデルにした「人材育成事業」、様々な人が人を募ってプロジェクトを立ち上げ遂行する「人材クラスター事業」によって、地域課題を解決している。

 同社では、地域創生および社会課題解決に向けた施策を必要に応じて提供している。具体的には、自治体に対してDX研修や働き方アップデートのためのネットワーク環境整備、ヘルプデスク代行などを実施。過疎化が進む中山間地域では、“買い物難民”への対策や移動手段の確保などの解決モデルを、住民とともにアイデアを出し合いながら構想を練っているという。その上で、必要なデジタルツールやテクノロジーの提供を行うと藤井氏。また民間企業に対しても、デジタルリテラシー向上や心理的安全性の醸成などについてカリキュラムを提供しているとした。

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「ITリテラシーも低かった」ひろぎんHDのDXマインド醸成術

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この記事の著者

伊藤真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

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