「1年でモダナイズの状況は大きく変化している」1990年から潮流を見てきた老舗企業の幹部がひも解く
システムモダナイゼーションの世界的な潮流、日本企業の課題

日本と米国におけるITモダナイゼーションの現況や課題、そしてCIOが果たすべき役割とは何か──レガシーシステムのモダナイゼーションを専門とするグローバル企業Rocket Software、同社は34年以上の実績を持ち、Fortune 500、Forbes Global 2000の主要企業をはじめ、12,500社超の顧客を支援してきた。2024年11月に開催された「モダナイゼーションフォーラム2024」にあわせて、スチュアート・マクギル氏(Stuart McGill:SVP of Hybrid Cloud Sales)とニール・ファウラー氏(Neil Fowler:SVP of Hybrid Cloud Engineering)が来日。モダナイズの現場で直面する課題などについて聞いた。
SAP移行だけでない、米国に訪れているモダナイゼーションの波
米国におけるITモダナイゼーションのトレンドは、どのように変化しているのか。マクギル氏は「『モダナイゼーション』という言葉は、今では多くの企業で認知されている言葉となりました。10年前と比べても状況は大きく変化しています」と語る。
多くの企業・組織が、業務システムの周辺部分から着手し、徐々に中核となるミッションクリティカルシステムへと移行していく。往々にしてモダナイゼーションのプロジェクトは、限られた時間とコストの中で進める必要があるものの、その規模は着実に拡大しているという。
たとえば、製造業では長きにわたりSAP S/4HANAへの移行、新たなパッケージシステムの導入など、“既存システムの置き換え(クラウドリフトなど)”がモダナイゼーションと考えられてきた。しかし、ここ1年で状況は大きく変化しているという。多国籍自動車メーカーのステランティス、ゼネラルモーターズ、フォード・モーター、日産自動車、トヨタ自動車といった主要な自動車メーカーが、長年放置されていたシステムをモダナイズし、それらを最新のアプリケーションアーキテクチャに統合するためのプロセスを検討している状況だ。
過去2年間、前述した以外にも多数の自動車メーカーがRocket Softwareに接触してきたという。その理由についてマクギル氏は「SAPで置き換えられなかった製造プロセスの中核を担うコアシステムが、新たなアーキテクチャとの統合を必要としているからです」と説明した。
こうした動きは保険業界でも見られるという。当初モダナイズを進めていたのは中小企業が多かったものの、現在では大手企業が大規模システムをモダナイズする必要に迫られている。
一方、銀行業界では、リテールバンキング、投資銀行、信託銀行といった業態ごとに異なる動きが見られるという。投資銀行や信託銀行は、リテールバンキングに比べても早いペースでモダナイズが進行。ここには一貫したアプリケーションアーキテクチャやデータアーキテクチャを描いてシステム構築を行っているかどうか、そこに差異があるとする。特にAIを活用したいと考えている企業が増えている中、いかに基幹システムに蓄積された社内データと外部データを組み合わせられるか、焦点も移り変わっている状況だ。
「CEOは『イノベーションの加速が必要だ』と認識している一方、そこにアプリケーションアーキテクチャの刷新が必要になるとは理解していません。だからこそ、IT部門がしっかりと説明しながら、アプリケーションとデータのアーキテクチャ刷新・統合を牽引する必要があるのです。まさに経営戦略を達成するためには、モダナイゼーションが欠かせない段階に来ています」(マクギル氏)
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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