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1年経っても冷めやらぬVMware買収騒動の余波……場当たり的な“離脱”の前に考えるべきポイント

インフラの決定権をユーザー企業が握るために──Gartner トニー・ハーヴェイ氏が語る

 仮想化基盤市場で世界的に圧倒的なシェアを誇るVMwareが半導体ベンダーのBroadcomに610億ドルで買収されたのは2023年11月のこと。当時のVMwareの負債80億ドルも含めると690億ドル、日本円にして10兆円を超える超巨額の買収である。その後、Broadcomが発表した値上げをともなう大幅なライセンス体系の変更はVMwareにインフラ基盤を依存していた多くの企業に衝撃を与え、“脱VMware”を検討する動きが加速した。「(VMwareユーザー企業の)ITリーダーがまずやるべきことは、自社のインフラストラクチャをどの方向に向かわせようとするのか、それをはっきりとさせることだ」──こう語るのはGartnerでシニアディレクター アナリストを務めるトニー・ハーヴェイ(Tony Harvey)氏だ。同氏は2024年12月にガートナージャパン主催の「ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス 2024」に登壇するために来日、VMware移行問題に悩む日本企業のITリーダーとも面談を重ねたという。本稿ではハーヴェイ氏の講演「BroadcomによるVMwareの買収: I&Oへの影響とその対策」と、その後の単独インタビューをもとに、日本企業が取るべき施策について見ていきたい。

What happened:BroadcomによるVMware買収で何が起こったのか

 冒頭でも触れたように、BroadcomがVMwareの買収を完了させたのは2023年11月22日である。その直後の2023年12月、BroadcomはVMware製品ラインアップとライセンスモデルの変更を発表したが、その一方的とも受け取れる提示内容に世界中のユーザー企業は混乱、なかにはBroadcomに対する強い怒りを示した企業も少なくなく、AT&Tのように訴訟沙汰にまで発展したケースもある。

 Broadcomが示したVMware製品の主要なライセンス変更点は以下となる。

  • 永続的ライセンスからサブスクリプションライセンスへ:2024年2月4日をもってこれまでVMware製品で提供してきた買い切り型の永続的ライセンスを廃止し、すべての製品で保守サポートを含んだサブスクリプションライセンス(1年/3年/5年)を適用
  • CPUソケット単位からCPUコア単位へ:物理CPUソケット単位からCPUコア単位での課金に変更
  • メニュー選択からバンドル販売へ:数千を超える機能単位の製品ラインナップを4つのエディション(VMware Cloud Foundation〔VCF〕/VMware vSphere Foundation〔VVF〕/VMware vSphere Standard〔VVS〕/VMware vSphere Essentials Plus)に統合。なお顧客は4つのエディションから自由に選択できるわけではなく、Broadcomが定義する顧客セグメントに応じて購入可能なエディションを制約される

 このライセンス体系はその後さらに変更され、vSphere Essentials Plusは2024年11月11日付けで廃止となり、同エディションのライセンスはVVSに統合された。また同時期に旧vSphereの「Enterprise Plus」エディションとほぼ同内容の「vSphere Enterprise Plus(VEP)」ライセンスが登場している。

 高い市場シェアをもつプロプライエタリ・ベンダーが強気な価格改定やライセンス改定を行うことはよくあるが、ここまでドラスティックな変更を全ユーザーに対して例外なく実施したケースはあまりない。ハーヴェイ氏は「VMwareの顧客のほとんどは、Broadcomのあまりに急な動きにキャッチアップすることができず、それがもとで混乱が加速した。特に永続的ライセンスを購入していた企業の多くは基幹インフラの大部分をVMwareに依存しており、ライセンス変更の猶予期間がわずか2ヵ月しかない状態ではBroadcomにノーを突きつける(VMware製品の利用をやめる)こともできなかったろう」と語る。

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Gartner シニアディレクター アナリスト トニー・ハーヴェイ(Tony Harvey)氏

 3つの変更点は既存のVMwareユーザー企業のほとんどに実質的なコスト増をもたらしたが、その影響の大きさは企業によって大きく異なる。ハーヴェイ氏は「ライセンス改定後にユーザー企業がVMware製品に支払うコストは平均で2~4倍上がったが、もっとも影響を受けた企業・組織だと12倍ものコスト増となっている。対して、もともとVCFをフルスタックで利用していたユーザーであれば10~50%程度の上昇に留まっている。Broadcomはライセンス改定後の提案や割引においてVCFを大きく優遇しており、VCFの大口顧客であるほど(ライセンス改定の)影響を小さく抑えることができている。だが、中堅中小企業やこれまで細かいオプションを指定して価格を抑えていた企業、コア数が多い高性能なCPUを利用してライセンスコストを削減していた企業の場合、ライセンス体系の変化についていくことは難しいかもしれない」と分析する。

 VCFを優遇するという施策は「プライベートクラウドへの回帰」を掲げるBroadcomの戦略とピタリと一致する。2024年8月、BroadcomはVMware買収後初となるプライベートカンファレンス「VMware Explore 2024」を米ラスベガスで開催。その基調講演でBroadcomのホック・タン(Hock Tan)CEOはVMwareの世界中の顧客・パートナーに対し「企業の未来はプライベートクラウドにある」と宣言した。データセンター全体を仮想化し、重要なワークロードとデータをプライベートな環境に留めることができるVCFを大々的にアピールしたのだ。

 もっともBroadcomはVCFの大口ユーザー以外を“切る”という選択をしているわけではなく、ライセンス改定後から多くの顧客と対話を続けている。ハーヴェイ氏は「顧客のフィードバックを受け、Broadcomも価格やライセンスに若干の柔軟性をもたせる動きを見せている。VEPを廃止し、VVSに統合したのもそのあらわれだろう」と指摘しており、今後も既存の顧客をつなぎ止めるための変更があることは十分に考えられる。

次のページ
How influenced:値上げによる顧客への影響

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五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

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