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1年経っても冷めやらぬVMware買収騒動の余波……場当たり的な“離脱”の前に考えるべきポイント

インフラの決定権をユーザー企業が握るために──Gartner トニー・ハーヴェイ氏が語る

VMwareから他社製品に乗り換える

 2の「VMwareから他社製品に乗り換える」を選択した場合、1よりも多くの懸念事項──サポート、依存関係、スキル、管理、移行コスト、ソフトウェア/ハードウェアの互換性、移行ツールなど──が発生することは覚悟しておく必要がある。そのうえでハーヴェイ氏は乗り換えのアプローチとして「他社製品による再仮想化」「パブリッククラウドへのリフト&シフト」「リアーキテクト/モダナイズ」の3つを紹介している。

画像を説明するテキストなくても可

出典:Gartner (2024年12月)

[クリックすると拡大します]

  1. 他社製品による再仮想化:Nutanix、Azure Stack HCI、Linux KVMなどが一般的な候補だが、もっとも注目度が高いのはNutanix。またスタートアップのStorMagicやOxide Computer、SoftIronは知名度がまだ低いが、技術的には非常に有望。オープンソースプロジェクトのKubeVirtやOpenStackも可能性としてはあるが、熟練したスキルをもつ技術者が必要。AWS Outpostsのようなクラウドサービスをオンプレミス環境に拡張したサービス(Gartnerはこれらを「Distibuted Hybrid Infrastructure」と呼んでおり、マジッククアドラントによる各社サービスの評価も行っている)を利用する場合は切断時のオペレーションに関するチェックが必要。いずれを選ぶにせよ、競合他社の仮想化製品がVMwareを100%置き換えることは不可能なので、製品の機能と戦略的方向性を考慮して選択すべき
  2. パブリッククラウドへのリフト&シフト:AWSなどのパブリッククラウドへの移行においてもっともリスクを考慮しなければならないポイントはアプリケーション。VMwareで動いていたビジネス上重要なアプリケーション(あるいはRubrickのようにVMwareを前提としたアプリケーション)がクラウド上に移行したときどう動くのかについては十分な検証が必要。むしろオンプレミスと同じエクスペリエンスを望むリフト&シフトよりも、ある程度の変更を前提にしたリフト&オプティマイズ(最適化)を推奨する
  3. リアーキテクト/モダナイズ:契約更新をきっかけにVMwareで構築してきたレガシー資産を刷新し、モダンなインフラストラクチャとしてインフラを生まれ変わらせるには多大な労力とコストがかかるが、将来のビジネスにおける潜在的な投資収益率(ROI)は最大。長期的なプロジェクトとなることを覚悟し、経営陣を説得できれば取り掛かる価値はある

 ここでハーヴェイ氏は顧客が移行先の候補として挙げることが多いNutanixについて「仮想化に関してはかなりの部分をカバーすることができるが、ストレージのサポートに問題がある。メジャーなストレージでNutanixがネイティブサポートできているのはDell PowerFlexくらいで、ここが改善されなければVMware移行ユーザーを増やしていくことは難しい」と語る。また、その他の競合製品を選ぶにしてもVMwareを完全に互換できないことは理解しておく必要があるという。

 「VMwareの移行がなぜ簡単にいかないのか。理由は大きく3つある。1つはVMwareに紐づいている有形無形のリソースが膨大であり、多くのエンジニアが存在すること。VMwareに関連した仕事は今も多くの需要があり、インフラを熟知したエキスパートの存在は企業のビジネスを成功させるに欠かせない。2つ目はvCenterという本当に素晴らしいマネジメントツールを代替できる存在が他にないこと。そして3つ目はハードウェア/ソフトウェア、そしてサポートなどを含めたエコシステムの完成度が高いことだ。当たり前だが移行タスクとはハイパーバイザの変更だけに留まらない。脱VMwareを図るということはハードもソフトもサポートもこれまでとは同じようにはいかなくなるということだ」(ハーヴェイ氏)

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The lesson:今回のVMware騒動から学ぶ教訓

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五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

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