動画生成AIはリッチコンテンツの需要増の1つの解
先述したGDOの事例は、電通デジタルとして動画生成AIを用いた初の事例となった。この他にも、配信には至らなかったもののアパホテルやカカクコムでもNova Reelを使った、動的な背景を持つバナーを作成している。
また、電通デジタルはAWS以外のクラウド事業者とも提携しており、顧客のニーズやユースケースにあわせてさまざまなLLMを活用しているという。では、新参者であるNovaをどのように見ているのか。山本氏は「安定性に優れている」と評する。たとえば、動画生成AIには同じプロンプトを用いたとき、構図が大きく変わったり、左右が逆転したりするが、そうした事象が起きなかったという。服装、色などの細かな指示もきちんとくみ取ってくれるとして、「一貫性をもって同じ背景がローテーションすることなどを、動画として初めて生成できた」と話す。もちろん、静止画でも動画でもAIを使っている場合には、必ず最終的に人によるチェックが入る。
なお、山本氏の話からは、AWSのサポートが一定の役割を果たしていることもわかった。「こういうプロンプトだとうまく動かない」といった内容が記載された10ページほどのガイドラインをAWS側が用意しており、そのガイドラインに沿ってプロンプトを入力しているという。
このように現実的な技術であることに加えて、コストパフォーマンスでのメリットも生まれていることから、電通デジタルでは動画生成AIの活用を積極的に進める考えだ。まずは広告配信を手がけている電通デジタルの顧客約1,000社に積極的に提案していく、と山本氏。「静止画のバナーにわざわざAIを使う必要はないと考えていたお客様にも、動画を訴求していきたい」と述べ、「3割程度を目標にしていきたい」と続けた。
生成AIを使うということに対する顧客のハードルも、かなり下がっているようだ。「テキスト系であれば、ほぼ障壁はない」と山本氏。画像や動画についても、人手での確認が入れば基本的に問題はないと判断をする企業も多いという。
一方、すべての動画で生成AIを利用するわけではない。用途やコスト、品質のバランスを見ながらの適用となっていく。まずは、動画バナーが中心になっていくというのが、山本氏の見立てだ。
さまざまなLLMが登場する中、適材適所で使うというのが電通デジタルのスタンス。それを可能にしているのが、同社がモンゴルに構えるAI開発拠点だ。現在も開発拠点を維持・拡大している中、引き続きモデルを蒸留(Distillation)して軽量化するなど、AIモデルのノウハウを蓄積してきたいとのことだ。
最後に山本氏は「動画コンテンツのような“リッチな体験”への需要は、今後さらに高まる。電通デジタルは『∞AI』を通じて需要に応えていく」と述べた。