厳しいスケジュールの中、Workatoで刷新に着手
これらの課題を踏まえ、新しいシステムには以下の条件が求められた。
- クラウドサービスでのデータ連携が可能であること
- 周辺システムとの連携が費用面で障害にならないこと
- 使いやすく、広く活用され、変革を妨げないスピード感が確保できること
そして、数あるiPaaS(Integration Platform as a Service)製品の中から選ばれたのがWorkatoであった。
「Workatoを選んだ理由は3つ。1つ目は、GUIがユーザーフレンドリーな点です。初心者でも直感的に操作できる子供向けビジュアルプログラミング言語『Scratch(スクラッチ)』のようなUIを使って、開発に取り組めます。2つ目は、追加コストなしで新しい連携が可能な環境を実現できる点です。そして3つ目は、Workatoのユーザーに寄り添う姿勢です。同社の担当の方が、我々の意図を汲み取り、迅速に必要な情報を提供してくれました」(濱本氏)
Workato導入にあたり、約2ヵ月間のオンボーディングが行われた。まずはシステム連携の仕組みを2つ作成することからスタート。Workatoから伴走者が入り、作業手順を教えてもらいながら進めていったという。オンボーディング期間中はSlackでサポートを受け、構築したシステムに疑問が生じた際はすぐに質問できる環境で、ほぼリアルタイムでの伴走だったと濱本氏は当時を振り返った。
オンプレミス環境が終了するまで数ヵ月という厳しいスケジュールの中、濱本氏はプロジェクトを無事に完遂できるのか不安を抱いていたが、Workatoの支援を受けながら準備は着実に進められていったという。プロジェクトの遂行にあたっては、全体で33本のシステム連携の仕組みを、現行システムや刷新予定システムとの関係性ごとに4つの象限に分類。移行優先順位を分析することで、効率的に作業を進めていったとのことだ。
Workatoで作成する自動化ワークフローのことを「レシピ」と呼ぶが、その制作はオンボーディングの効果もありスムーズに進んでいったと濱本氏。特に、同氏が便利だと感じたのが「データピル」と呼ばれる機能だ。これは、各アクションから出力されるデータをブロックとして表示し、連携構築の際に使用する変数として利用できる機能である。一般的に、変数の操作は初心者にはハードルが高いが、データピルの場合はそのタイミングごとに使用可能なアクションと変数が一覧で表示されるため、視覚的にわかりやすく、効率的に作業を進められたという。
ただし、社内システム環境の制約により作業がスムーズに進まない場面もあった。連携先企業ではプライベートクラウドを利用しており、iPaaSとの直接通信ができない状況だったため、同じネットワーク内に仮想サーバーを設置し、Workatoの「オンプレミスエージェント」を活用してデータのやり取りを行った。
この方法で、外部からは接続できないレガシーシステムとの連携を可能にし、さらにそのシステム特有のファイル形式にも対応できたため、オンプレミスエージェントを介してサーバー内でバッチ処理を実行。ファイルをCSV形式に変換し、取り込みや書き出しを実現した。なお、当時のWorkatoは対応していなかったような特殊ファイルも、現在は読み込み可能な形式が増えているとのことだ。