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トランプ大統領“肝入り”超巨大AIプロジェクトの第一関門とは/中国発の生成AIが世界を震撼させた真因

「責任あるAI」の実現に向けて「ガードレール」がより重要に

 米国のAI戦略はドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の誕生により劇的に変化することは間違いない。今回はドラスティックな変化を予感させる2つの大きなAIニュース「Stargate Project」と「DeepSeek-R1」の登場について触れておきたい。また、NVIDIAがリリースしたAIエージェントのためのガードレール機能についても紹介する。

前代未聞の“5000億ドル”プロジェクト 資金調達が最初の課題か

 1月20日付けで米国大統領に就任したトランプ氏の言動は、就任から1ヵ月も経たないうちから世界中に様々な混乱をもたらしているが、テクノロジーの世界も例外ではない。特に、今後も大きな変化(前バイデン政権の施策の撤廃を含む)が続くことが予測されているのがAIの分野で、就任翌日の1月21日にはこれからの劇的な変化を象徴するかのようにホワイトハウスで5000億ドル(約77兆円)規模の「Stargate Project」が発表された。既に様々なメディアで報じられていることから既知の読者も多いと思うが、以下あらためて同プロジェクトの概要を簡単に示しておく。

  • 今後4年間(つまりトランプ大統領の在任期間中)で5000億ドルを投資して米国でOpenAIの新しいAIインフラストラクチャを構築する
  • 初期の出資者はソフトバンク、OpenAI、Oracle、MGX(アブダビのAI投資会社)でプロジェクトの主要パートナーはソフトバンクとOpenAI。ソフトバンクは財務責任を、OpenAIは運営責任を負い、会長は孫正義氏(ソフトバンクグループ 代表取締役会長兼社長執行役員)が務める
  • 初期の主要技術パートナーはArm、Microsoft、NVIDIA、Oracle、OpenAI
  • 既に最初の1000億ドル分のプロジェクトとしてテキサス州アビリーンの大規模キャンパスにデータセンター複合施設を建設中。なお建設中のデータセンター群はAIスタートアップのCrusoe(クリプト事業者からAIスタートアップに転換)が2024年(トランプ大統領が選挙で勝利する前)から開発する施設で、Oracleが全面的にリースしている

 Stargateのニュースを聞いたとき、何より驚かされたのは5000億ドルという途方もない巨大な数字だ。この金額はAWSやMicrosoft、Googleといったハイパースケーラーが過去にデータセンターに投資してきた額よりもはるかに多い。また、報道によればStargateは現時点で政府からの資金援助を受けないとされている。したがって5000億ドルという莫大な資金をStargateがどこからどのように調達するのかを疑問視する声が上がるのも当然だろう。

大統領就任翌日の1月21日にホワイトハウスで行われた「Stargate Project」の発表には初期投資メンバーの3名(サム・アルトマン氏/OpenAI、孫正義氏/ソフトバンクグループ、ラリー・エリソン氏/Oracle)も参加。4年で5000億ドルをAIデータセンター構築に投じるというが、それらの資金をどのように調達し、どう使っていくのかはまだ明らかになっていない部分がほとんどである

 なお、トランプ大統領の側近としてホワイトハウス入りしたイーロン・マスク(Elon Musk)氏はStargateの発表翌日の1月22日、「Stargateの出資者には資金がない(They don't actually have the money)」「確かな筋から聞いた情報では、ソフトバンクが確保しているのは100億ドル以下(Softbank has well under $10B secured. I have that on good authority.)」とXに投稿し、Stargateに対する疑問をあらわにした。

 これに対し、マスク氏との間で訴訟を抱えるOpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)CEOはすぐに「いや、あなた(マスク氏)も知っている通り、それは間違っている。なんなら最初のデータセンターを建設中の場所に来てみないか。このプロジェクトは国にとって素晴らしいもので、それがあなたの会社にとってはそうじゃないかもしれないけど、(ホワイトハウス入りしたんだから)新しい役職ではアメリカファーストでいてほしい」と応酬している。

 ホワイトハウスの高官であるマスク氏が、その任命者たる大統領が直接発表したプロジェクトを公然とこき下ろしている事態は明らかに異例だが、だからといってStargateがスムーズに5000億ドルを集められると思っている向きは少数派だろう。米国の複数の有力紙によれば、初期出資者の4社がStargateのために現時点で用意できている資金は450億ドル程度とされている。これは5000億ドルどころか1000億ドルにも届かず、4社(特に財務担当のソフトバンク)が今後、どのように資金を調達するのかが注視されている。

 加えて、データセンターを建てるにあたって必要なのは資金だけではない。十分な電力の調達、地域住民の説得、技術者の確保、災害対応計画などやるべきことは山積しており、データセンターの規模が大きくなるほどにその負荷は増大する。これらのチャレンジにStargateはこれからどう臨むのか、今はまだ不明瞭なその実体が少しずつ明らかになることを期待したい。

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ダークホース「DeepSeek」が証明した“米国依存からの脱却”

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五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

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