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2025年6月20日(金)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

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『EnterpriseZine Press』

2025年春号(EnterpriseZine Press 2025 Spring)特集「デジタル変革に待ったなし、地銀の生存競争──2025年の崖を回避するためのトリガーは」

住友生命 岸和良の“JTC型DX”指南書 ~停滞するデジタル変革に喝!~

日本の伝統企業「JTC」に蔓延るDXに無気力な社員……縦割りを打破し“横に動ける人”を育てる4の極意

第1回:なぜJTCではDXが進まないのか? 組織風土を変えるカギとは

横をつなげるための「4つの視点」

 組織の“横をつなぐ”ようにするためには、以下の視点で考える必要があります。

1. 共通の目的の設定と啓蒙

 最初にすべき重要なことが、自部門のゴールだけでなく全体共通の目的を設定して共有すること。「顧客体験向上」「業務効率化」「リードタイム短縮」などといった部門横断で共有できるゴールを設定し、共通KPIを明示するだけでも、社員は“横”を意識し始めます。あるメーカーの直販ECサイトでは「見込み客の再来訪率の改善」を全社KPIに設定したことで、営業部門と製品開発部門が密接に連携し、アフターサービスの大幅な改善につながった例があります。

 共通目的を策定する際には、経営層からのメッセージ発信も重要です。「全社のゴールは一つだ」という認識を持たせることで、部門の利害を越えた連携が促進されます。一例として、筆者は住友生命の健康増進型保険「Vitality」のITプロジェクトリーダーを担当してきましたが、このプロジェクト以降、社長や役員、関係する部課長が幅広く参加する部門横断プロジェクトミーティングを何年にも渡って月次で実施してきました。これが、ゴールの共有と意思決定のスピード向上に貢献しています。

2. 横断人材の育成と配置

 営業部門や商品開発部門、システム部門など複数の部門を経験した“越境人材”や“ブリッジ人材”を育成・配置することも重要です。ある通信企業では、営業部門出身の社員がマーケティング部門に異動し、顧客視点を活かしたプロモーション改善を行ったことで契約率が大幅に改善されたという事例があります。このような人材を、部門を横断してプロジェクトを進めるPMO(Project Management Office)に配置することで、意思決定が加速するのです。

 加えて、こうした人材を孤立させず、横串で支援する仕掛けも欠かせません。社内SNSやナレッジ共有の場を整備し、成功事例を社内で可視化することで、“横への動き”が称賛される社内文化を醸成していくことが大切です。住友生命では、これを実現するため社長直轄の社内横断組織を複数設置し、横の連携協働を促進する取り組みを行っています。私が事務局長を務めるデジタル&データ本部もその一つです。

3. 組織体制の見直し

 部門横断型のプロジェクトチームやタスクフォースを制度化し、共通のKPIで連携を促進する仕組みを構築します。営業部門・商品開発部門・システム部門が一体となって目的志向で動ける体制を常態化させることが重要です。さらに、部門を越えて自由に意見交換できる「共創の場」を用意し、心理的安全性を高めることも有効です。

 また、経営陣自身が“横の対話”に積極的であることが部門間連携の文化づくりに大きな影響を与えます。トップが関与し、対話の場に登壇する姿勢が現場に安心感をもたらします。

4. マインドセットの改革

 最も重要なのは、部門を越えて動くことが評価される文化を育てること。心理的安全性を高め、前例がないことに挑戦する姿勢が尊重される環境づくりが変革の土台になっていきます。評価制度においても、部門への貢献度に加えて「全社への貢献度」や「他部門との共創による会社への貢献度」を評価軸に組み込むことが求められます。

 そして、このマインド改革を推進するためには、語り続けるリーダーの存在も不可欠です。変革の意義を語り、背中で示すリーダーの行動が社員の意識を変えていきます。

 DXは、単なるデジタル化の話にとどまりません。変革の本質は、「人と人」「部門と部門」「企業と企業」をつなぐ力にあります。JTCの強みである誠実さや現場力を活かすためにも、“横を強くする”取り組みを一過性で終わらせず、仕組みと文化に根づかせることが重要です。

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この記事の著者

岸 和良(キシ カズヨシ)

住友生命保険相互会社  エグゼクティブ・フェロー  デジタル共創オフィサー デジタル&データ本部 事務局長住友生命に入社後、生命保険事業に従事しながらオープンイノベーションの一環として週末に教育研究、プロボノ活動、執筆、講演、趣味の野菜作りを行う。2016年から...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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