定型レポート以外の情報
例えば、毎月、毎週、業務内容を要約した情報が決まった形式で提供されるケースを考えてみましょう。経営幹部の方々が、このような情報を見て、直ちに具体的な対策を指示するということは殆どありません。レポートが示す特徴を見て、担当者に原因や裏づけを確認して初めて真実に辿り着き、そこで具体的な対策が生まれてきます。ところが、経営幹部から質問を受けた担当者が、詳細の状況を調査するための術を与えられているケースは極めて少ないのも現実です。結局、担当者の経験と勘で答えた内容に基づき意志決定が行われています。
この課題に対するソリューションとしてよく見るのが、必要となる詳細情報を想定したドリルダウンレポートや大きなキューブを構築するスライス・アンド・ダイスなどの分析手法です。初期の開発段階で、これだけのコストをかければ差別化を考えるために必要な情報は揃います、というアプローチは一見魅力的に感じます。しかし、大きな問題が二つ存在します。一つ目がコストの問題です。将来的に必要になるかもしれない情報を予め想定して開発するということは、それだけ初期の開発コストを膨らませるということです。
もう一つは「予め想定する」ことにどれだけの効果を期待できるかということです。業務改善のアイデアは、日々の業務遂行の中から生まれ、さらに、改善ニーズや手法は、目まぐるしく変化する経営環境に大きく左右されるからです。ここでも製造業の歩留分析を例に考えてみましょう。
要約された日次レポートには製品ごとの歩留状況が記載されます。生産管理を担当する経営幹部は、なかなか向上しない歩留に強い問題意識を持ち、改善しない理由と対策を担当者に求めます。当然のことながら、担当者も、経営幹部以上に同様の問題意識を抱えており、実は、原因をうっすらと分かっているケースが少なくありません。しかし「うっすらと」では実務レベルの対策に落とし込むことはできませんので、ここで、データによる裏づけが必要となるわけです。
例えば、調達先の異なる同じ部品があり、その組み合わせによって歩留に差があることに気がついたとします。この仮説は、おそらく事前には想定できなかった事でしょう。ご担当者のなすべきことは、必要なデータを集めこの仮説を検証することです。表計算ソフトでも構いません。真実を突き止めるまで、データの組み合わせを変え分析することです。何もカッコの良いレポートだけが情報提供だけではありません。分析に必要なデータをタイムリーに提供できることが、今後益々重要になってきます。そして、汎用データベースで構築された、MES(Manufacturing Execution System)やデータウェアハウスでは、インデックスの貼られていないデータが応答することはなく、このような自由度が実現できない大きな原因となっています。