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ベンダーに発注した「アジャイル開発型プロジェクト」が頓挫、責任は誰にある? 管理義務の本質を考えよう

アジャイル開発で「完成しなかった責任」は誰が負う?

 この事件の核心は、アジャイル開発において「“完成しなかった責任”を誰が負うべきか」という問題にあります。特に注目すべきは、発注者が主張した「プロジェクトマネジメント義務違反」という争点です。

 従来のウォーターフォール型開発では、契約締結時に仕様が確定し、その仕様通りに開発を進めることがベンダーの義務でした。しかし、アジャイル開発では仕様を後から確定させていくため、プロジェクトの進行管理により高度な専門性が求められます。

 今回の事件では、発注者は「開発ベンダーが適切なプロジェクトマネジメントを行わず単に追加費用を主張するのみで、プロジェクトを成功に導く義務を怠った」と主張しました。たしかに、専門知識を持つベンダーには、技術的な開発作業だけでなく、プロジェクト全体を俯瞰し、適切な助言や調整を行う責任があるように思えます。

 一方で、アジャイル開発では仕様の確定にユーザーの積極的な関与が不可欠です。ユーザーが要求を整理できなければ、どれほど優秀なベンダーでも完成させることは困難でしょう。

 また、契約形態も重要な論点です。開発ベンダーは当初から「準委任契約」をイメージしていると明言し、成果物の完成ではなく業務の遂行そのものが目的であることを説明していました。この点で、完成に対する責任の範囲はどのように解釈されるべきでしょうか。

 さらに、本件では2017年8月の時点で開発ベンダーから「アプリとして破綻している」との率直な状況報告がなされ、9月には仕掛品が納品されています。このような経緯を踏まえると、発注者は適切な情報提供や提案を行っていたと評価できるのかもしれません。

 果たして裁判所は、アジャイル開発における未完成の責任をどのように判断したのでしょうか。

東京地方裁判所 令和3年11月25日判決より

 ソフトウェアの開発に係る契約である本件契約の特質に鑑みると、開発ベンダーは、本件ソフトウェアの開発に当たり、ユーザーである発注者に対し、ベンダーとして通常求められる専門的知見をもって本件ソフトウェアの開発を進め、得られた情報を集約・分析して原告に必要な説明を行い、その了解を得ながら必要な修正及び調整等を行いつつ、本件ソフトウェアの完成に向けた作業を適切に行うべき義務(プロジェクトマネジメント義務)を負っていたものと認められる。

(中略)

 (本件開発においては)本件ソフトウェアに機能を盛り込みすぎであり、 現状の予算で作製することは困難であるとの懸念を示し、機能を絞った上でブラッシュアップフェーズを設けて作製すべきであるとの意見を述べた上で、発注者に対して本件仕掛品を送信して具体的な検討を促しており(中略)、かかる懸念及び意見はもっともなものであったと認められる。すなわち、開発ベンダーは、本件ソフトウェアの仕様の作成は発注者の役割であるとして、漫然と放置していたわけではなく、打合せを基に本件ソフトウェアの開発を進め、本件仕掛品を基に発注者に必要な助言を行った上で、本件ソフトウェアの完成に向けた提案を行っていたと認められるのであり、プロジェクトマネジメント義務を果たしていたものと認められる。

 以上により、発注者の請求はすべて棄却されました。

次のページ
裁判所が示した「プロジェクトマネジメント義務」の本質

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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