サイバー攻撃、選挙介入……廣瀬陽子氏が語る、ウクライナ戦争におけるハイブリッド戦争の新たな展開
「サイバー防衛シンポジウム熱海 2025」レポート Vol.1
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ウクライナ戦争の終わらせ方が世界の未来を決める
ウクライナ戦争は今後どうなっていくのだろうか。ウクライナ政府は昨年、今年のうちに戦争終結を目指す「ウクライナ勝利計画」を公表している。ロシアも制裁により戦車の生産が難しくなるほど継戦能力が低下しており、年内に何らかの形で戦争が終わると期待されていた。しかし、米国トランプ政権の動き次第では、ウクライナに不利な形での和平を迎える可能性もあり、予断を許さない状況だ。
いずれにせよ、この戦争をどう終わらせるかは日本にとっても非常に重要であり、「ウクライナ戦争の終わり方が世界の未来を決める」と廣瀬氏は断言する。
「現在はイスラエル・パレスチナ問題などにより、ウクライナ戦争への注目度が以前よりも下がっています。この状況はロシアを利しており、やりたい放題できるチャンスを与えてしまいます。もしウクライナの主権が侵害され、力による現状変更がまかり通るような終わり方を迎えたら大変です。同じ動きが東アジアでも起こる可能性があります」(廣瀬氏)
中国が台湾に侵攻する可能性があるほか、北朝鮮はウクライナ戦争においてロシア側に義勇兵を送ることで現代戦を経験しており、東アジアは危険な状態にある。ロシアは現在も他国の選挙などへ介入を続けており、今後、民主主義がどうなっていくのかが不安視される。
国際的な法治主義も揺らいでいる。ICC(国際刑事裁判所)はプーチン大統領らに戦争犯罪人として逮捕状を出しているが、そのICCに対し、トランプ政権は「正当な根拠なく逮捕状を出し、権力を乱用した」との理由で制裁を課している。もはや誰が悪を裁くのかもわからない状況だ。
「世界の安全保障にとって極めて深刻な事態に陥っています。より多くの人がウクライナ戦争に関心を持ち、その終わらせ方について考えていただきたいです」(廣瀬氏)
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名須川 竜太(ナスカワ リュウタ)
編集者・ライター
編集プロダクションを経て、1997年にIDGジャパン入社。Java開発専門誌「月刊JavaWorld」の編集長を務めた後、2005年に「ITアーキテクト」を創刊。システム開発の上流工程やアーキテクチャ設計を担う技術者への情報提供に努める。2009年に「CIO Magazine」編集長に就...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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