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サイバー攻撃、選挙介入……廣瀬陽子氏が語る、ウクライナ戦争におけるハイブリッド戦争の新たな展開

「サイバー防衛シンポジウム熱海 2025」レポート Vol.1

なぜワグネルが投入されたのか? 正規軍では不可能な“戦闘”

 軍事的な行動を伴うフェーズ2は、大きく2つに分類できる。1つ目は“正規軍の展開”だが、これは「展開するが、戦闘はしない」点が大きなポイントだ。

 例として挙げられるのが、2014年のクリミア侵攻だ。ロシアの正規部隊がクリミア半島に展開し、地域住民を威圧した。この時に展開した軍は「リトルグリーンメン」と呼ばれ、ロシア軍でありながら軍の記章などは身に着けず、どこの軍隊かわからないよう偽装していた。

 「クリミアの人々からすれば、どこの国の軍隊かわからない人たちが突然やってきて威圧してくるという、非常に怖い体験だったでしょう。この恐怖感の中でロシアへの編入の是非を問う住民投票が行われ、多くの人が賛成に投票しました。その結果、クリミア半島はロシアに編入されることが決まりました」(廣瀬氏)

 フェーズ2の2つ目に挙げられたのが、民間軍事会社(PMC)の展開だ。たとえば、ウクライナ戦争で広く知られることとなったワグネルは、この戦争をロシアにとって有利に進めるために作られた軍事組織である。

 ロシアがクリミアを併合した直後、ウクライナ東部で親ロシア派の住民による独立運動が始まった。参加した住民はロシアから武器供与などの支援を受けていたが、民間人が武器を持ったところでウクライナ正規軍に勝てるわけがない。ロシアとしてはより強力に支援したいが、ロシア正規軍が介入すればただちに国家間の戦争になってしまう。

 そこで行われたのが、PMCの投入である。プーチン大統領は盟友のエフゲニー・プリゴジン氏にワグネルを設立してもらい、それを投入してウクライナ東部の親ロシア派を支援した。実際には、ロシア正規軍も相当数がウクライナ東部に入ったと見られるが、「ワグネルが雇った傭兵だ」とすることで、表向きは正規軍を使わずにウクライナに介入したのである。

フェーズ1、2を経てついに「ウクライナ戦争」勃発

 フェーズ2がさらにエスカレートすると、フェーズ3の本格的な戦争となる。これをウクライナ戦争に当てはめてみよう。

 この戦争は、まさにフェーズ1、2がセットで行われた2014年のクリミア併合から始まったと考えられる。フェーズ1の情報戦をロシアは10年かけて行った。つまり2007年頃より情報戦を仕掛けており、クリミアの人々がロシアに加わりたくなるような工作を続けてきた。

 「ロシアに併合されれば良いことがある、併合されるのも悪くないと思わせ、選挙のたびに親ロシアの候補者が勝つよう仕向けました。そしてクリミア併合を果たすと、今度はフェーズ1の動きがウクライナ東部で起こり、2021年にフェーズ2としてウクライナ国境付近に正規軍を大集結させた後、フェーズ3の正規戦に突入したのです」(廣瀬氏)

ウクライナ戦争はハイブリッド戦争の集大成

 ウクライナ戦争は、ロシアによるハイブリッド戦争の集大成ともいえる。そして、その手法は戦争の進展に伴って大きく変化してきた。2014年までは情報戦やサイバー戦、軍事的脅迫が主だったが、現在は他国への選挙介入、難民の武器化、高度な情報戦やサイバー戦、タスク外交、さらには人質外交まで行われている。物理的な破壊や海底ケーブルの切断、GPS妨害などの攻撃も激化しており、これらの発生件数は2023年の13件から、2024年には44件と大きく増加した(※4)。

 情報戦の手法も進化した。ロシアは現在、生成AIを利用した「オーバーロード作戦」や「マトリョーシカ作戦」「ストーム1679」などと呼ばれる、巧妙な情報戦を仕掛けている。

 同国は、以前から『Sputnik(スプートニク)』や『RT(ロシア・トゥデイ)』などの自国メディアを使った情報戦を展開してきたが、今やそれらのメディアがロシアに有利な報道をしても、プロパガンダだと見破られてしまう。そこで、現在は生成AIを使い、あたかもCNNやBBCといった欧米メディアの本物の報道であるかのような動画を生成して、大量に拡散するといった手法を展開しているのだ。

 「2024年、特に多く拡散されたのが、世界各地に避難するウクライナ難民が現地で犯罪を犯しているという偽のニュース動画です。動画を流した後は、ファクトチェック機関に大量の通報を行って業務をパンクさせることで機能不全に陥らせ、さらに偽ニュース動画を拡散させるといったことを繰り返しています」(廣瀬氏)

 こうした情報戦を繰り広げる一方で、選挙介入や諸外国の弱い部分(社会問題など)を突いた工作、諜報・暗殺活動などを強化するとともに、自国のエネルギー資源や食糧も武器として使っている。小麦や天然ガスなどをアフリカや中東、アジア諸国に格安もしくは無償で供与し、それらの国々の支持を取り付けているのだ。サウジアラビアなどの産油国も、ロシアの安価なエネルギーを購入して国内で消費し、自国で産出するエネルギーは西側諸国に高値で輸出している。

※4:オランダ ライデン大学『RUSSIAN OPERATIONS AGAINST EUROPE SINCE THE 2022 INVASION OF UKRAINE』より。

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SSD創設でサイバー攻撃が激化、物理&サイバーの連携も可能に

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この記事の著者

名須川 竜太(ナスカワ リュウタ)

編集者・ライター
編集プロダクションを経て、1997年にIDGジャパン入社。Java開発専門誌「月刊JavaWorld」の編集長を務めた後、2005年に「ITアーキテクト」を創刊。システム開発の上流工程やアーキテクチャ設計を担う技術者への情報提供に努める。2009年に「CIO Magazine」編集長に就...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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