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サイバー攻撃、選挙介入……廣瀬陽子氏が語る、ウクライナ戦争におけるハイブリッド戦争の新たな展開

「サイバー防衛シンポジウム熱海 2025」レポート Vol.1

心当たりはあるか? ハイブリッド戦争の3つのフェーズ

 このように勢力圏を重視するロシアが、欧米との闘争手段として用いてきたのが「ハイブリッド戦争」だ。これは政策目的を達成するために、軍事的な手段と政治、経済、外交、サイバー攻撃、プロパガンダ、情報心理戦、テロ、犯罪行為などといった様々な手段を組み合わせた戦争である。正規戦と非正規戦を組み合わせた戦争だといえるが、明確に定義することは難しいと廣瀬氏は強調する。

 「NATO側でハイブリッド戦争に携わる方などは、『絶対に定義できない』と話します。なぜなら、日進月歩でその手法が進化しており、一度『これがハイブリッド戦争だ』と定義してしまうと、それに当てはまらない新たな攻撃手法が現れた際に対処できなくなる恐れがあるからです。つまり、『定義すべきではない』というのが日夜ハイブリッド戦争に対応している現場の考えなのです」(廣瀬氏)

慶應義塾大学 総合政策学部 教授、KGRI副所長 廣瀬陽子氏
慶應義塾大学 総合政策学部 教授、KGRI副所長
廣瀬陽子氏

 ハイブリッド戦争そのものは決して新しいものではないが、今なぜこれが駆使されているのかといえば、非正規戦の手法が飛躍的に進化・拡大しているからだ。廣瀬氏によれば、ハイブリッド戦には大きく次の3つのフェーズがある。

  • フェーズ1:サイバー攻撃、情報戦、政治的脅迫、経済的脅迫、制裁、ワクチン外交、難民テロなど
  • フェーズ2:軍や民間軍事会社(PMC)などの展開による軍事的脅迫
  • フェーズ3:正規軍による戦闘

 フェーズ1は非正規戦的な手段、フェーズ3は正規戦的な手段であり、フェーズ2は両者の中間に当たる。フェーズが低いほど実行に際してのリスクが低いという特徴がある。

コロナ禍の「ワクチン外交」もハイブリッド戦争の一つ

 サイバー攻撃や情報戦は、近年のフェーズ1で最も使われている攻撃手法だ。政治的・経済的な脅迫は今や古典的な手法だが、たとえば米国のトランプ政権は、外交手法として政治的・経済的な脅迫を頻繁に利用している。制裁は通常、ハイブリッド戦争には含まれないが、「ロシアは自国に対する制裁を『欧米が仕掛けるハイブリッド戦争』だと捉えているため、報復措置をとらなければという態度で臨んでいる」と廣瀬氏は説明する。

 ワクチン外交がハイブリッド戦争に含まれていることは意外に思われるかもしれない。だがロシアは、コロナ禍でグローバルサウス(※3)やEUの一部国家に対しワクチン・医療物資を提供しており、これはNATOからすれば「ロシアによるハイブリッド戦争」だと捉えられる。背景には、グローバルサウスやEUの一部を取り込もうという思惑がある。

 「コロナ禍、欧米はグローバルサウスの優先順位を後にしていたため、それらの諸国に対しワクチンなどを十分に提供できていませんでした。そこに目を付けた中露は、これらの国々にどんどんワクチンを配ったのです。この動きは一定の成果を挙げており、グローバルサウスの中には欧米にネガティブなイメージを持つ国が多く、『中露は我々を助けてくれる』と親近感が高まりました」(廣瀬氏)

ハイブリッド戦争下におけるグローバルサウスとロシア、民主主義国家の関係
ハイブリッド戦争下におけるグローバルサウスとロシア、民主主義国家の関係

 EUの一部にも、コロナ禍で十分な支援を受けられない国があった。それを中露が支援することで、EUの分断を図ろうとする動きもある。

社会混乱を引き起こす難民テロ、人命被害に発展する手法も

 難民テロは、主にロシアの同盟国であるベラルーシが行っている手法だ。中東やアフリカから連れてきた難民をポーランドなどの隣国に送り込み、社会的な混乱を誘発する。それを防ぐために隣国が国境を封鎖して難民流入を防ごうとすると、今度は「難民を閉め出すなんて非人道的だ」と情報戦を仕掛けるのだ。

各地で仕掛けられる難民テロ
各地で仕掛けられる難民テロ

 加えて、ここ数年で活発化しているのが物理的破壊、GPS妨害、海底ケーブルの切断といった攻撃である。近年はフェーズ1の手法がどんどん進化しており、これまでフェーズ1の攻撃は人的被害を伴わないという認識だったが、様々な施設が爆弾などで破壊されるケースも出てきており、人命が失われる危険性が高まっているという。

 「破壊工作のほかにも、GPS妨害によって旅客便が飛べなくなったという事例もあり、その際に欧州の北東部では欠航便が増えました。GPS妨害は墜落の原因となる可能性もあり、かなり深刻な状況です」(廣瀬氏)

※3:アジアやアフリカ、南米などの新興国や発展途上国の総称。経済成長が著しい国を含み、国際社会における発言力や影響力を強めている。

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なぜワグネルが投入されたのか? 正規軍では不可能な“戦闘”

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この記事の著者

名須川 竜太(ナスカワ リュウタ)

編集者・ライター
編集プロダクションを経て、1997年にIDGジャパン入社。Java開発専門誌「月刊JavaWorld」の編集長を務めた後、2005年に「ITアーキテクト」を創刊。システム開発の上流工程やアーキテクチャ設計を担う技術者への情報提供に努める。2009年に「CIO Magazine」編集長に就...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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