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五味明子の『エンプラIT Round-up』

医師の負担軽減へ──地域医療機関が“院内生成AI”による「退院時サマリ」自動作成をオンプレミスで実装

年間2000万円のコスト削減に匹敵 「正確さ」が重視される医療現場でどう担保したのか?

試験運用を経て、年間2000万円のコスト削減効果を見込む

 2024年12月末までにAI機能評価(LLMモデル選定とサマリ評価、評価定量値の設定など)を終え、2025年1月から1ヵ月半をかけて試験運用を実施した。期間中(生成AIシステム導入前)の退院患者数は1,524人、退院時サマリの総作成時間は833.35時間、患者1人あたりの平均作成時間は32.8分で平均修正回数は2.56である。ここで既に作成された患者の退院時サマリ記載内容と、構築した生成AIシステムが電子カルテから作成/要約したサマリがどれだけ一致しているかを比較したところ、52.8%という結果が出た。これはサマリの全72項目中、38項目に合致するという精度を示しており、当初に掲げた目標である「患者の入院中に医師が記載したカルテを情報として提供し、現サマリを50%以上網羅した退院時サマリを自動作成する」に達している。

 また、同病院は年間約1万1,400人の患者が入院し、退院時サマリの作成時間は患者1人あたり32.8分とすると、総作成時間は6035.2時間となるが、このうち52.8%が削減されるとすれば3186.6時間の減少となる。これは医師の年間総労働時間の1.56%にあたり、「金額にして約2000万円のコスト削減効果」(宮内氏)が見込まれるという。

 サマリの修正にあたっては患者1人あたり2.56回の修正が行われているが、これまではこの作業に事務職員が駆り出されるケースも多かった。生成AIによる自動サマリでその作業時間が削減できるため、その体制を大きく圧縮することが可能になる。今後は外来サマリや看護サマリなどに対しても同様のシステムを職員によって展開し、他院も含めた病院内外での情報共有を加速する施策も検討中だという。

 那須赤十字病院では、2025年3月からこの生成AIによる退院時サマリ作成機能を院内で活用を開始。本プロジェクトを振り返って宮内氏は「現場の人間が自然言語で指示した内容が、自然言語で出力されてくる。今までは使用する側がシステムに合わせなければならなかったが、自然言語で結果を得られる対話型の生成AIシステムは本当に画期的だと実感している」と語り、本プロジェクトから得られた学びとして以下の3点を挙げている。

  • ChatGPTは安価で優秀だが情報漏洩のリスクが高い。今回のシステムは「院内にAIサーバーを構築し、院内データ(電子カルテデータ)のみを使用した」が、院内だけの使用に限られるのでセンシティブな患者情報を扱っても院外に漏洩するリスクは極めて低い。また、自然対話型の“問えば答える”生成AIシステムは汎用性が高く、誰にとっても使いやすい
  • Ubuntu、Dify、Ollamaなどオープンソースを多用したことで利用者が増えてもライセンスコストを抑えられるので、院内の全職員や地域の連携施設にも安価に提供することが可能
  • 病院の職員(医療情報管理課の職員)が本システムの構築手順ならびに調整方法をマスターしたので、今回の退院時サマリから外来サマリや看護サマリなどに展開/拡張する体制が整った。今回の電子カルテ情報に加え、院内規約/マニュアル、病棟看護業務手順文書、電子カルテオーダー情報(他院医師への提供含む)、読影医の音声文字起こしデータといった様々なデータを活用するシーンに対応していく
画像を説明するテキストなくても可
那須赤十字病院 医療情報管理課 課長 宮内明博氏

 「我々がやったような生成AIの取り組みが全国に拡がって、日本の医療現場に新しいインフラが作られていけばうれしい」──今回のプロジェクト公開にあたり、宮内氏はこう語っている。同氏によれば本プロジェクトに要した費用は「1000万円かからない金額」といい、他の医療機関や中小企業などでも十分に手が届く範囲だ。現場の負荷を少しでも減らしたいという一心からスタートした生成AIのスモールプロジェクトだが、そこから得られるであろう効果は決して小さくないはずだ。

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五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

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