セールスフォースの「Agentforce 3」の真価:MCP、可視化、200超の業種別テンプレートで何が変わるのか?
セールスフォース 「Agentforce 3」会見レポート
各ベンダーのMCP対応が急速に進んでいるワケ
最後に、Agentforce強化における3つ目の柱が相互運用性の向上である。セールスフォースの製品ポートフォリオは多岐にわたる。Sales Cloud、Service Cloudなどでのアクション実行、Tableauでのデータ分析の実行、Slackでの応答と、Salesforce環境内だけでもかなりのことができる。しかし、企業が利用しているアプリケーションは、セールスフォース製品だけではない。契約手続きは電子契約サービス、見積りや請求の手続きは他社のサービスといった具合に、他社のアプリケーション利用はよくあることだ。このような場合、Agentforceの能力を拡張しようとすれば、外部アプリケーションシステムへの接続が避けて通れない。

外部のアプリケーションを含めてAIエージェントのスキルを拡張させたい。「このニーズへの対応は、MCPの登場前はかなり面倒だった」と前野氏は指摘する。例えば、Google、PayPal、Boxそれぞれで実行したいアクションがあるとする。スキル拡張では、それぞれが公開しているAPIの仕様を理解し、認証し、接続する。接続したいサービス3つすべてでカスタム統合が必要になる。この方法はあまりに負担が大きい。

そこに出てきたのが、AnthropicのMCP(Model Context Protocol)である。最初はAnthropic社内のみの利用を想定していたものだが、2024年11月の社外への公開をきっかけに、オープン標準として主要ベンダーの対応が急速に進んでいる。「MCPはUSB-Cの規格のようなもの」としばしば説明されるように、USB Type-Cという規格に統一されれば、USB Type-A、USB Type-B、mini USB、Micro USBと、ケーブルを使い分ける必要がなくなる。AIエージェントの場合も、採用している企業同士が少ない負担で連携できる。「MCPを通じてアクセスすることで、個別にAPI連携をする必要がなくなる。MCPの仕様だけ理解すればいい。非常に素晴らしい仕組み」と前野氏は説明した。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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