SAPの構造化データ専用モデル「SAP-RPT-1」登場 LLMが解けないビジネス課題を解決できるか
SAP Buildで「バイブコーディング」も可能に
SAPは、2025年11月4日から6日にかけて開発者向けの年次イベント「SAP TechEd 2025」を開催した。この記事では基調講演の数多くの発表の中から、4つのハイライトを紹介する。
「SAP Business Data Cloud」がSnowflakeにも対応
2025年2月に発表したSAP Business Data Cloud(以降、BDC)。これは、企業独自のビジネスデータファブリックを構築し、データの検出、共有、ガバナンス、モデリングを容易にするものだ。BDCは、次世代アプリケーションの構築、そして“信頼性の高い”AIの導入を支える基盤でもある。BDCを利用することで、信頼できるデータ基盤と統合されたセマンティックレイヤーを構築し、より多くのAIプロジェクトから成果を上げることを目指す。
このBDCの主要コンポーネントの一つが、AIを実装した「インテリジェントアプリケーション」である。これによりビジネスユーザーでも、意思決定のための“アクショナブルインサイト”(実行可能な洞察)を容易に得られるようになった。そして、このアクショナブルインサイトを支えているのがデータプロダクトだ。これもBDCの主要コンポーネントの一つであり、ファイナンスや調達、サプライチェーン、人事、顧客体験といった業務領域を横断するような利用用途を想定した、数百ものデータプロダクトが用意されている。SAPのマイケル・アメリング氏(President, SAP Business Technology Platform, SAP)は、「データプロダクトの提供範囲がS/4HANAから、SuccessFactors、Sustainability、Customer Experienceまで、多くのアプリケーションに拡大した」と発表した。
また、データチームのために「Data Products Studio」も提供するという。これはデータプロダクトを視覚的にモデリングできるようにするもので、SAPデータと非SAPデータをあわせて再利用かつ共有可能なデータプロダクトを作成できる。共有ドメインベースのデータカタログを使えば、作成したデータプロダクトのバージョン管理からテスト、ガバナンス確保まで、プロダクトのライフサイクル管理も可能だ。
さらに、アメリング氏は「私たちは、お客様に最大限の柔軟性と選択肢を提供することにコミットしている」と述べると、SAP Business Data Cloud Connectの選択肢に、DatabricksとGoogle Cloudに続き、Snowflakeが加わったことを明らかにした。「SAP Snowflake solution extension for SAP Business Data Cloud」(SAP Snowflake)は、SAPからSnowflakeに接続することで、Snowflake内のフルマネージドデータとAI機能にBDCからアクセスできるようにする。これにより、BDCとSnowflake間の“ゼロコピー”での共有を実現でき、エンタープライズ要件を満たしたインテリジェントアプリケーションを構築し、ビジネスユーザーがより良いアクショナブルインサイトを得られるようになるとした。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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