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冨永裕子の「エンタープライズIT」アナリシス

SAPの構造化データ専用モデル「SAP-RPT-1」登場 LLMが解けないビジネス課題を解決できるか

SAP Buildで「バイブコーディング」も可能に

Joule Agentの拡張と「A2A」への対応

 アクショナブルインサイトを得られたとして、アクションを実行する主体が必ずしも人間とは限らない。AI時代には、AIエージェントが人間に代わってアクションを実行する場面が増えるはずだ。SAPは、既にさまざまな分野で20種類のAIエージェントを提供しているが、2025年末までに40種類にまで増やす計画を進めている。すぐに利用できるAIエージェントの拡充、既存のAIエージェントのスキル拡張の方法を提供しているものの、企業がまったく新しいAIエージェントを独自に構築したいと考えたとき、どのような実現手段があるのか。ハーツィヒ氏は大きく2つの方法を紹介した。

 一つはローコードツールを利用するもの。Joule Studioの「Agent Builder」「Skill Builder」上で自然言語とドラッグ&ドロップ操作を駆使し、スピーディーに構築できる。とはいえ、ローコードツールは、あくまでも専門知識を持たないビジネスユーザー向けのものだ。プログラミングに長けた開発者ほど、高いレベルでのコントロールと柔軟性を求める。そこで、もう一つの方法として新しく提供するのが、プロ開発者向けのAIエージェント「Pro-code Agents」だ。このAIエージェントを使うことで、開発者は任意のプログラミング言語、任意の開発環境で自由にAIエージェントを構築できる。必要に応じてCrewAI、LangGraph、Microsoft Agent Frameworkなど、既存のエージェントフレームワークも利用可能だ。

 また、企業がすべてのAIエージェントをより大きなエコシステム上で利用できるよう、Joule Agentsは「A2A」プロトコルにも対応した。A2Aは、エージェントに何ができるかを記述したセマンティクスを公開する、AI時代の標準プロトコルの一つである。A2Aへの対応で、SAP以外のAIエージェントがJoule Agentsを見つけ、共同で複雑なタスクを実行できるようになる。SAPからも同様にGoogle Cloud、Microsoft、ServiceNowなど、Joule内からA2AをサポートしているベンダーのAIエージェントを利用可能だ。これ以外でも、AIエージェントの相互運用性を確保するため、SAPは多くのパートナーと共に標準化に取り組んでいる。

図3:Joule AgentsがA2Aに対応(出典:SAP)
図3:Joule AgentsがA2Aに対応(出典:SAP)
[画像クリックで拡大]

 さらに、より複雑なタスクを実行できるように専用の環境も用意された。それが「Agentic Orchestration」である。AIエージェントが複雑なタスクを与えられると実行計画を策定。複数のステップにタスクを分け、タスク解決まで推論と実行ループを繰り返す。別のAIエージェントとの協力が必要になれば実行状況をモニタリングし、確実に実行するための制御が必要になる。そのための環境がAgentic Orchestrationだ。

次のページ
バイブコーディングに対応した「SAP Build」

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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