セールスフォースの「Agentforce 3」の真価:MCP、可視化、200超の業種別テンプレートで何が変わるのか?
セールスフォース 「Agentforce 3」会見レポート
Salesforce外でのアクションが可能になるMCP接続での拡張
MCPへの準拠で、より多くの外部サービスへの接続が可能になったとしても、接続できるだけでは不十分だ。信頼性が高く、企業のビジネスポリシーに合致し、適切なガバナンスの下でアクセスできるようになって初めて、本当に価値のある仕組みになる。そこで、セールスフォースは2つのアプローチでMCP準拠を進めることにした。1つはAgentforce MCP Clientをサポートし、AgentforceからMCP準拠の外部システムへのアクションを可能にすること。そしてもう1つが、AIエージェントのマーケットプレイスAgentExchangeに信頼できるMCP Serverを登録し、そこから企業が外部サービスへの接続を安全に利用できるようにしたことだ。

実際のスキル拡張は、Agent Builderで行う。例えば、「注文番号12345のPayPal請求書の作成を手伝ってください」と依頼したとする。PayPalとの連携前の回答は「このPayPalの請求書を直接作成することはできません」になる。そこで、MCP連携でスキルを拡張することにした。まず、AgentExchangeで「追加」をクリックすると、MCP Serverのリストが表示される。ここに登録されているのは、すべてセールスフォースで検証済みのものになる。PayPalを選択し、PayPalのMCP Serverを入手する。認証を行い、許可されると接続できるようになる。このMCP Serverの仕組みの中で、できるスキルは複数ある。一部だけを選択し、Agentforceのスキルをコントロールすることができる。今回は「請求書の作成」「請求書の取得」「請求書の送信」3つ全てを選び、「完了」をクリックすると、新しいスキルが追加された。

さらに、AIエージェントが勝手に多額の請求書を送らないよう、自然言語で指示を追加し、アクションをコントロールすることもできる。人間は当然として、AIエージェントにも企業のビジネスポリシーに準拠してもらう。これはAIエージェントのガードレール設計に相当する。例えば、「請求書の金額が1万円を超える場合、マネージャーにSlackで承認依頼を通知してください」と指示を追加したとする。保存後にもう一度「注文番号12345のPayPal請求書の作成を手伝ってください」と依頼すると、今回は請求書作成を正常に実行した。さらに、「請求金額が1万円を超えているので、Slack通知も作成しました」と、確認を求めるように変わった。
この例に挙げたPayPalの他、AgentExchangeから接続できるMCPパートナーは35社。今後もパートナーの拡充を進める。国内でもテラスカイのmitocoとウイングアーク1stから賛同を得ているという。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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