富士通は8月27日、ヘルスケア業界向けのAI活用基盤をFujitsu Uvanceの「Healthy Living Platform」上に構築したと発表した。
同基盤には、AIエージェントを統合管理するための「オーケストレーターAIエージェント」が実装されており、同社および国内外のパートナーが開発する様々なヘルスケア特化型AIエージェントを組み込めるとしている。
今回の取り組みは、データとAIによって医療機関の経営効率化と安定的な医療サービスの提供を促進させることを目的としたもの。日本の医療費は年々増加傾向にあり、2022年度には46兆円に達しているという。その約半分が医療機関における人件費に充てられ、うち約16%にあたる約3兆円が事務作業に費やされていることからも、多くの医療機関が財政赤字を抱え、医療従事者の過重労働が常態化しているとした。
富士通の大塚尚子氏は、この状況を打破するための手立てとしてAIを挙げる。「AIを活用し、複雑で属人化した医療業務オペレーションから医療従事者を開放する必要がある。これにより、医療機関の業務・経営改革を推進し、日本医療における持続可能性の向上につなげていきたい」と述べた。

富士通 執行役員常務 グローバルソリューション(ソーシャルソリューション&テクノロジーサービス担当) 大塚尚子氏
続いて、同社の荒木達樹氏が今回の取り組みの全体像を示した。同氏は、大塚氏が挙げたような世界観を実現するためには「医療従事者に代わって、具体的な指示がなくとも特定の目標達成のために状況を正しく認識してタスクをこなす『AIエージェント』が必要だ」と説明する。

Healthy Living Platform上に構築したAI活用基盤は、NVIDIAの支援のもと開発。医療業務オペレーションを担う“業務特化型AIエージェント”群を組み込み、業務オペレーションの変革を支援する。
従来、医師や看護師、医療事務担当者などが行っていた一部の業務をAIエージェントが担い、司令塔であるオーケストレーターAIエージェントの指示のもと、自律的にAIエージェント同士が連携・協働することで、業務全体の最適化を目指すとしている。

一例として、AIエージェントが患者の受付を行って必要な項目の問診を行い、適した診療科へ案内するユースケースが紹介された。オーケストレーターAIエージェントが患者データや医療業務データなどをもとに、患者との会話を通じて必要な業務特化型AIエージェントを選択し、指示を出すという。今回の場合、受付・問診・診療科分類の3つのAIエージェントに順番に指示を出し、連携して自律的に処理を進める仕組みとなっている。

荒木氏は今後の展開について「2025年内に同基盤の有効性の検証を医療機関と連携して進めるとともに、業務特化型AIエージェントの開発と事業化も進める予定だ。既に2025年内での収益化の見込みも立っている」と述べ、説明会を締めくくった。
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