関西の女性ITリーダー40名が集う──紆余曲折を糧にしてきた、りそなデジタル・アイ島田社長のキャリア道
番外編:「Enterprise IT Women's Forum 2025 KANSAI」開催レポート
硬直化する“JTC”の挑戦──グローバル化の推進/アンバサダー育成
オムロン:JTCの情シスが“世界で戦える”組織に変わるまで
オムロンのグローバルIT戦略室で人と組織のトランスフォーメーションを担当する工藤英子氏は、「JTC(日本の伝統的企業)のJTC情シスが、どうすれば事業により貢献できるグローバルIT組織に進化できるか」を模索中と話す。
海外売上比率6割のオムロンは、5つの事業体と60を超えるビジネスユニットが個別最適で運営されるサイロ組織だった。情シスの業務といえばネットワークや基幹システムの運用・保守が中心で、DXは遠い世界の話だったという。

変革の契機となったのは2023年度の業績悪化。大規模な構造改革を断行し、情シス組織もグローバルで統合されることになった。そこで工藤氏が直面したのは人材不足の問題。グローバルIT戦略室は当初、上司と工藤氏の2人だけだったが、社内プロモーションと地道なスカウト活動を展開し、6人までメンバーを増やした。
さらにグローバル全6地域からチェンジエージェントを任命し、グローバルなネットワークを構築。現場の課題を収集し、トップマネジメントに提案する仕組みを作った。コミュニケーションの壁には、Teamsの自動翻訳機能で対応。会議でのリアルタイム字幕翻訳も導入し、英語力だけに依存しないコミュニケーションを実現してきた。
最後に、工藤氏は変革のモットーを掲げる。「正しいことを当たり前にやる。忖度文化なんて知りません」「組織の垣根を越えて仲間を作る」「スピーディに実行、ダメならやめればいい」の3つ。きっと参加者の心にも響いたことだろう。
パナソニックIS:62人のアンバサダーとともに320件のお困りごとに対応
パナソニック インフォメーションシステムズの栗岡舞氏は、PX(Panasonic Transformation)の一環として、グループ全社でデータ・テクノロジーの利活用を推進している。データやテクノロジーを利活用できる人材を増やし、支援するため、「PX研修」「PXアンバサダー」「賞金総額500万円の現場PXコンテスト」の3つのワーキンググループを立ち上げた。

アナリティクスソリューション事業部 ユニットリーダー 栗岡舞氏
中でも注目すべきは、PXアンバサダーだ。現場のプロフェッショナルをアンバサダーとして公募し、お困りごとがある部門とマッチングさせる仕組みで、2024年度は62人が活動し、9ヵ月で170件の依頼に対応。5点満点中4.72という高い満足度を獲得した。今年度は既に150件を超える依頼があり、累計320件のお困りごとを解決しているという。
オンラインで情報が届かない課題も感じたため「お出かけアンバサダー」を企画。直接現場に足を運び、対面での相談会を実施した。「現場の悩みを言語化すること自体ハードルが高いので、一緒に画面を見ながら直接相談することで解決できた」と好評ぶりを振り返る。
さらに対応の高位平準化・効率化のため、類似するお困りごとはテンプレート化を進行中。アンバサダーへの「Wish List」制度も導入し、少ない事務局メンバーでの運営を実現している。経営幹部からの表彰制度やアンバサダー同士の横のつながりを作ることで、アンバサダーのモチベーション維持にも配慮している。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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