関西の女性ITリーダー40名が集う──紆余曲折を糧にしてきた、りそなデジタル・アイ島田社長のキャリア道
番外編:「Enterprise IT Women's Forum 2025 KANSAI」開催レポート
「非IT企業」が取り組む内製/生成AI普及と高品質データの担保
エイチ・ツー・オー リテイリング:会議室予約も紙だった会社が取り組む内製化
阪急百貨店、阪神百貨店、イズミヤなど43の事業会社を持つエイチ・ツー・オー リテイリングで、デジタルソリューション開発部長を務める三樹愛氏。2018年の入社当時は、会議室予約も紙で、システム開発は外部ベンダーに丸投げ状態だったという。

IT・デジタル推進グループ デジタルイノベーション室 デジタルソリューション・開発部 部長 三樹愛氏
転機は役員交代による組織変革。2023年にデジタルソリューション開発部を立ち上げ、ノーコード/ローコードツールによる内製化をスタートした。ITリテラシーが高くない会社での挑戦だったが、百貨店販売員から出向してきたメンバーを含む社員5名、業務委託8名の小さなチームで歩み始めた。
最初の成功事例は「走るデパ地下」のキッチンカー業務アプリ。百貨店出身メンバーを中心に、1.5ヵ月で開発。これが口コミで広がり、グループ各社から依頼が殺到するようになった。
現在は社員16名、業務委託40名の大所帯に成長。外部研修や勉強会、開発ブログを習慣化するなど、スキルアップに余念がない。独自のオンボーディングプログラムも実施している。「今後もAIなど新たなテクノロジーを活用して進化していきたい」と三樹氏は意気込んだ。
ダイハツ工業(前渋氏):入社1年弱のひよっこが挑む、全社への生成AI展開
ダイハツ工業で生成AI活用を推進する前渋貴子氏。実は2024年10月入社の「ひよっこ」だが、全社員が生成AIを駆使する組織をつくるという大きな目標を掲げている。

同社はセキュリティレベルの異なる2種類の生成AI利用環境を展開している。機密情報を扱える「D-AI-hatsu Assistant」と、一般公開情報のみ入力・検索が可能なChatGPTおよびCopilotのグループで、多様な業務に対応している。
展開にはリテラシー教育を徹底。全社員向けの説明会に加えて、役員に対しては前渋氏のチームメンバーが直接1on1でハンズオンを実施し、自分事として理解してもらう取り組みを行っている。現在では、社用PCを持つ社員の約4割が定期的に利用し、全部署で活用されるまでに広がった。さらにRAGやAIエージェントといった最新技術も導入。文書作成、翻訳、チャットボット、日程調整の効率化を実現している。
順風満帆に見えるが、課題も多いという。「生成AIを使う人と使わない人の二極化」「効果の可視化が困難」「RAG用データの整備不足」「複雑な業務フローのAIエージェント化」など、前渋氏は率直に悩みを明かした。「同じ悩みを持つ方、絶賛取り組み中の方、解決した方、ぜひお話したいです」と会場参加者に呼びかけた。
ダイハツ工業(井山氏):ものづくり15年の開発現場出身者が語る、データマネジメント
同じくダイハツ工業でデータマネジメントを担当する井山佳与氏は入社15年目で、キャリアの大部分をものづくりの現場で過ごしてきた。当時は、ITと言えば「使わせてもらうもの」という感覚。「パソコンの動きが遅い」と不満を言ったこともあったそうだが、今は利用者側から様々な意見を受ける側に回ったと笑う。
井山氏がデータマネジメントの重要性を痛感したのは、自分が扱っているデータに対し、データの出所や処理内容、データ品質などについて自信をもって語れず、「正しいデータ」と上司に伝えられなかった体験からだという。「正しい仕事をするには、正しいデータを使わなければならない」と井山氏。

目指すのは「必要な人が、必要な時に、必要なデータを使いやすい形で得られる環境」だ。データを探さないことを理想とし、現場の人がタイムリーに適切なアクションを取れる仕組みづくりに注力している。
井山氏は自身の困り事を振り返り、データ探し、利用許可の確認、前処理作業に時間を取られ、本来の分析や仮説立案に集中できない問題を指摘。「マクロが組めたら強者」だった現場から、属人化しない持続可能なデータ活用基盤の構築を目指している。
「データの品質にこだわる。質の悪いものを食べたくないのと同じ」と井山氏。料理に例えた分かりやすい説明で、データの出どころ、品質担保、使い方の明確化の重要性を説いた。現場出身者だからこそ語れる、データマネジメントの必要性だった。
本カンファレンスは、HENNGE株式会社の協賛で開催しました!
HENNGE株式会社は、女性ITリーダーの活躍を応援したいという本カンファレンスの趣旨に賛同し、協賛しました。さらに当日は、「成功」「喜び」といった花言葉をもつ花を集めた特製のブーケが、HENNGEのオリジナルリボンを付けて参加者にプレゼントされました。

HENNGEよりプレゼントされた特製ブーケとともに記念撮影
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:HENNGE株式会社
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