2025年10月15日、ウイングアーク1stは、生成AI版「MotionBoard」を同年12月20日にローンチすることを発表した。

同社 執行役員CMO 事業戦略本部長 久我温紀氏
同社は、主力製品のBIツールとしてMotionBoardを提供してきた中、生成AIの性能が飛躍的に向上している現況を加味し、生成AIに“ネイティブ対応”するためのアップデートを実施。同社 CTOの島澤甲氏は、「2025年に入り、飛躍的に生成AIの性能が向上してきた。これまでは手元にあるデータをどのように可視化するのかがハードルとなっていたが、生成AIを組み合わせることで簡単に行える」と話す。その一方、AIを業務適用できていないユーザーが多く、その要因は同じデータとプロンプトを用いても、異なる出力がされる点にあると指摘する。

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「我々は全製品の『MCP(Model Context Protocol)』対応を進めているが、AIエージェント経由では問い合わせの度に参照されるデータや表示画面が異なってしまう。そこでMotionBoardを生成AIに対応させる際、生成された画面(UI)を変えず、データだけ差し替えられるようにした」(島澤氏)

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説明会ではデモンストレーションも実施され、ユーザーがデータソースを定義した上で、自然言語でAIに問いかけることで動的にプログラムが生成されると、MotionBoard上に可視化される様子が紹介された。たとえば、一度生成された画面に修正が必要な場合、再度問い合わせた際でも基本的なUIを変えることなく、グラフの表示スタイルなどを変更できる。また、リアルタイムデータも流し込むことが可能で、製造現場などで固有の画面を作りたいというニーズにも対応できるとのことだ。「データの加工・修正など、BIツール上では通常対応しないような機能性も、MotionBoardでは実現している」と島澤氏。以前のMotionBoardと比べて、より“探索的”なデータ活用につなげられるという。

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今回、生成AIに対応したMotionBoardは、従来通り「Dr.Sum」などと連携した形での活用が想定されており、「AI時代は、データの時代だ。データが大量に発生している中、非構造化データが急速に増えていく予測もある。新しいMotionBoardでは、さまざまなデータ形式に対応した上で、基幹システムとエッジ端末のデータを統合可能だ。TCOの削減効果も見込める」と同社 CMO 久我温紀氏。2026年度には、500社の導入を目指すことも示された。

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説明会には、ユーザー事例として花キューピットとヤンマー建機の2社が登壇。花キューピットは、Dr.SumやMotionBoardを利用してきた中、受発注の状況などをオフィスの共有モニタに投影するなど、社内でツールが浸透している。

花キューピット株式会社 システム開発部 副部長 星野靖東氏
たとえば、注文が集中する「母の日」の配達件数や未手配状況などを可視化することで、スムーズに社内で情報共有できるようになったという。同社 システム開発部 星野靖東氏は、「よりMotionBoardを使える人を増やしていくことが目標だ。新しいMotionBoardにも期待している」と述べた。

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また、ヤンマー建機では、約5年前からDr.SumとMotionBoardを利用して、ゼロからデータ活用を進めてきたという。同社 イノベーション推進部 田中重信氏は、「とにかくデータをDr.Sumに集約してきた。また、MotionBoardでは『市民開発』を推進するため、データテーブルを専門部署が整備しながら、実際の画面は現場担当者が作り込んでいる。約1,800のテーブル、約1,500のボードが存在している状況だ」と話す。とはいえ、ボード作成者は限定的になっているため、操作性やUIの改善に加えて、AIに対する“苦手意識”をなくすような仕組み、他社製品とのシームレスな連携拡充を新たなMotionBoardには期待しているという。なお、同社では既に先述したAI機能(AIウィジェット)を試用しているとして、現場レベルでのデータ活用や作業効率の向上、SIerなどに依頼していた部分を内製化できる余地があるとした。

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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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