 
米NetAppは10月14から16日までの3日間、米ラスベガスで年次イベント「NetApp INSIGHT 2025」を開催した。同社は近年、「インテリジェントデータインフラストラクチャ・カンパニー」を掲げ、単なるストレージベンダーではなく、データ活用の支援まで踏み込んだ機能を提供することを目指している。今回のNetApp INSIGHTでは、そうした文脈に沿って、本格化するAI活用を支える具体的な技術と製品群を発表した形だ。「AIにフォーカスしてストレージを再定義・再発明した」とする同社が、今後の市場での競合環境や日本市場でのビジネスをどう展望しているのかも含め、現地で取材した。
AIプロジェクトでは約80%の時間がデータ整備に費やされている
NetApp INSIGHT 2025のメインイベントともいえる14日の基調講演で、同社 CEOのジョージ・クリアン氏がまず強調したのは、データに関する同社の“哲学”だった。「データは知識の基盤だ。データは他のデータと組み合わせることで知識へと統合される。人類が5,000年以上にわたりデータを記録してきたことは、まさに知識を追求するため。そして物語を共有し、伝統を継承し、自らと他者をより深く理解するためなのだ」と話し、現代のさまざまな分断を乗り越え、人々を結び付ける鍵を握るのもデータであると訴える。
 
NetAppはこの哲学に基づいて、1992年の創業以来、データ活用の課題を解決するためのツールを一貫して提供してきたという。クリアン氏は「NASアプライアンスによるストレージとコンピューティングの分離や、ユニファイドストレージ、ハイブリッドクラウド・データファブリックの開発・提供を通じて、データ活用の課題を一貫して解決してきた」と強調した。
そして目下、多くの企業・組織で生成AIの活用が実証実験から商用実装フェーズに移行する中、同社はAI活用にフォーカスしてストレージを再定義・再発明しているという。「技術としては企業データの全量を分析できるようになったが、業務アプリケーションの生データを『AI対応データ』に変換するハードルは高いままだ。AIプロジェクトの約80%の時間がデータ整備に費やされている」とクリアン氏は指摘する。
生データをAI対応データに変換するための「データパイプライン」は、AIプロジェクトに必要なデータの整理(キュレーション)、ガバナンス実装、メタデータ管理、ベクトル化といったプロセスで構成される。
「この過程で平均6つのデータコピーが生成され、データパイプラインが高コストで非効率、脆弱になっている。『データの重力』に逆らってデータを移動させる過程で、アクセス制御や来歴情報が失われる危険もある。既存のAIデータパイプラインは、構造化データを扱う従来のビッグデータ分析向けに設計された手法を多く流用しているため、AIが真価を発揮する領域かつ企業データの80~85%を占める非構造化データや、AIアプリケーションの要求に対応できていない」(クリアン氏)
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- この記事の著者
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                    本多 和幸(ホンダ カズユキ) 山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部を卒業し水インフラの専門紙を発行する水道産業新聞社に入社。関連省庁担当記者や企業ニュース面キャップなどを経験。2013年に株式会社BCN入社。「週刊BCN」の記者として法人向けITビジネス領域の取材に従事。国内外の大手ベンダーから有力スタートアップま... ※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です 
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