「AIをデータの側に持っていく」NetAppはAIDEとAFXで具現化へ
先述した課題に対してNetAppは、「AIのためにデータをコピーして移動させる」のではなく「AIをデータの側に持っていく」というアプローチ、つまりNetAppのデータプラットフォームソリューション(ストレージ)側でAIデータパイプラインに必要な機能を網羅する構想を打ち出している。INSIGHT 2025のハイライトは、この構想を具現化する新製品として、「NetApp AI Data Engine(AIDE)」と、その稼働基盤となる新しいフラッグシップの分離型オールフラッシュストレージ「NetApp AFX」を発表したことだ。NetApp AI Data Engineのビジョン自体は2024年に公表しているが、今回、具体的な製品を初めて公開した。
 
AFXはストレージコントローラー、NVMe対応のSSDシェルフ、GPU搭載コンピューティングノードの3要素で構成される。AIDEはコンピューティングノード上で稼働し、外部ネットワークを経由することなく、ストレージシステム内部で直接データにアクセス可能だ。これにより、データのキュレーションやベクトル化、インデックス作成といったAIデータパイプラインの主要プロセスを「ゼロコピー」で完結させる。新製品の詳細を解説した最高製品責任者(CPO)のシャム・ネアー氏は「ETLによるデータの抽出・変換・ロードやハーモナイゼーションなど、複雑な処理や混乱のないAIデータパイプラインが実現できる。従来のAIデータパイプラインの複雑性と非効率を根本的に解消し、AIワークロードの価値創出を加速させる技術だ」と強調した。
 
3つのコンポーネントが物理的に独立しているAFXの分離型アーキテクチャは、データの増大や高い処理性能の要求にも対応できるという。コントローラーとSSDシェルフ、GPUノードをそれぞれ独立して拡張でき、コントローラーは最大128ノードまで対応。ネアー氏は「毎秒テラバイト単位の帯域幅、エクサバイト規模の容量をサポートし、NetAppが業界で初めて実現した真のスケールアウトクラスターだ」と胸を張る。
またネアー氏は、これらの新製品はNVIDIAとの密接なパートナーシップの成果でもあると強調。AFXはNVIDIAの大規模なAIデータセンター構築のためのリファレンスアーキテクチャ「DGX SuperPOD」認定を取得している。
ハイブリッドクラウド対応とサイバーレジリエンスの強化
これらにあわせて、ハイブリッドクラウド対応も強化されている。NetAppは既にONTAPを基盤とした、クラウドストレージサービスを主要パブリッククラウドのネイティブサービスとして提供しているが、今回「Google Cloud NetApp Volumes」にブロックストレージ機能を追加した。さらに、スマートキャッシュ技術「FlexCache」がAzureとGoogle Cloudにもネイティブ対応。これによりオンプレミスと主要クラウドをまたぐ「グローバルネームスペース」が実現し、AI開発チームが異なる基盤からでも単一の最新データセットにアクセスできるようになったという。
加えて、AI時代のセキュリティリスクに対応するための「NetApp Ransomware Resilience」も発表した。ランサムウェア攻撃の前段階で行われる、データの不正な持ち出しを検知するための「Data Breach Discovery」や、攻撃を受けたデータを安全なクリーンルームで分析・除去し、迅速に復旧させる「Isolated Recovery Environment」機能を提供する。
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- この記事の著者
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                    本多 和幸(ホンダ カズユキ) 山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部を卒業し水インフラの専門紙を発行する水道産業新聞社に入社。関連省庁担当記者や企業ニュース面キャップなどを経験。2013年に株式会社BCN入社。「週刊BCN」の記者として法人向けITビジネス領域の取材に従事。国内外の大手ベンダーから有力スタートアップま... ※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です 
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