AIを“意のまま”に セールスフォースが解決率77%の知見を注ぐ「Agentforce 360」
「Dreamforce 2025」現地レポート:最新バージョンで強化された4つの領域
エンジニアだけのものではない「AIエージェントの可観測性」
4つ目の強化領域「マネジメント」では、継続的改善に対応。ソフトウェアのコードと同様に、AIエージェントは一度デプロイすれば終わりではなく、デプロイ後も改善が続く。そのためには“可観測性(オブザーバビリティ)”を確保し、組織内で稼働中のAIエージェントのパフォーマンスをモニタリングできることが望ましい。
イベント初日の基調講演でセールスフォースCEOのマーク・ベニオフ氏が訴えた「Agent Enterprise」の時代が到来するならば、リーダーには人間のメンバーだけでなく、AIエージェントのスキルもあわせた、自分たちの組織の成果を最大化するための新しいマネジメントスタイルへのシフトが必要になる。そうした意味でもAIエージェントの可観測性は、CxO以下、事業部門のリーダーや中堅クラスのマネージャーに至るまで、ビジネス部門のリーダーたちがチームの成果を上げるために役立つ。
そこで、複雑になるマネジメントの負荷を軽減するため、提供される新しいツールが「Agentforce Observability」である。これはAIエージェントのパフォーマンス最適化のためのコントロールセンターであり、ニアリアルタイムでの監視からインサイトの提供、問題の発見、迅速な解決までを支援してくれる。ユーザーは、エスカレーション率や顧客満足度のように、人間の担当者が業務で用いる各種指標に加えて、全セッション数や平均レイテンシー、平均品質スコア、平均トピックスコアなど、AIエージェントのパフォーマンスで重点的に評価するべき指標もあわせて確認可能だ。
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たとえば、マネージャーが「おかしな挙動を示すAIエージェントが存在する」という旨のアラートを受信したと仮定しよう。このときAgentforce Observabilityで各種指標を確認することで、平均品質スコアが低いことに気づける。また、詳細を調べていく過程において、シングルサインオンでタイムアウトが発生していることが判明。このとき単発的なインシデントなのか、それとも再現性のあるインシデントかを判断して対策を検討したいが、そのためには全セッションの会話内容を確認する必要があるため負担が大きくなる。そこで自分で調べる代わりに、Agentforce Scriptへとエクスポートすることで、より速く対策を講じるべき箇所を特定可能だ。さらには、同じ環境で改善を加えて、デプロイもできる。
このようにAgentforce 360で「制御」「コンテキスト」「体験」「マネジメント」の4領域を強化したことで、AIエージェントの継続的改善、そしてライフサイクルマネジメント確立の道筋が見えてきた。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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