タニウムが発表した「自律型IT」と「止めないビジネス」のビジョン:McDonald's、ServiceNow、Best Buyなどが賛同
Tanium 「Converge 2025」現地レポート #01
フロリダ州オーランドで2025年11月18日に開催された年次カンファレンス「Converge 2025」でタニウムCEOのダン・ストリートマン氏は、「Autonomous IT(自律型IT)」と「Unstoppable Business(止めないビジネス)」というキーワードを掲げ、AIとリアルタイムデータを活用した自律的IT運用の重要性を訴えた。キーノートでは、SailPoint、Best Buy、McDonald's、ServiceNowなどのグローバル企業リーダーが登壇した。各社は、人手不足やIT環境の複雑化という課題を前に、「自律型」というアプローチがビジネス継続の鍵であると認識を示した。
なぜ「Autonomous IT(自律型IT)」と「Unstoppable Business(止めないビジネス)」なのか
現代の企業経営では、ITシステムは単なる業務ツールではなく、ビジネスそのものを支える心臓部となっている。しかし、そのIT環境はかつてないほど複雑化している。分散したネットワークや数百万規模のエンドポイント、秒単位で進化するサイバー攻撃の脅威など、多くのIT部門は日々の障害対応やパッチ適用といった「リアクティブ(事後対応)」な業務に追われ、本来注力すべきイノベーションやビジネス価値の創出に十分な時間を割けないジレンマを抱えている。
「我々のミッションは、皆様の組織を真に『Unstoppable(止められない)』存在にするお手伝いをすることです」
ストリートマン氏はカンファレンスの冒頭でこう宣言した。システム停止やセキュリティインシデントによるビジネスの中断は、もはや許容できないリスクである。タニウムが提唱する「Autonomous IT(自律型IT)」とは、AIがリアルタイムデータに基づき自律的に判断・行動し、人の介在なしにシステムを健全な状態に保つ世界の実現を目指している。単なる自動化ではなく、経営のレジリエンス(回復力)を高める必須インフラへの進化だと位置づけている。
数百万のエンドポイントをリアルタイムに把握するテクノロジーが「自律型IT」を可能にする
タニウムが「自律型IT」へ舵を切った背景には、従来のIT運用の根本的限界とAI技術の進化という2つの要因がある。これまで多くの企業は、何かが起きてから対応する「事後対応」のスパイラルから抜け出せなかった。しかし、デバイス数の爆発的増加やリモートワークの定着によって、人が手動ですべてを監視・管理することが物理的に不可能となった。
ここでタニウムは、「正確かつリアルタイムなデータがあればAIは安全に自律行動ができる」という仮説を立てている。逆に、データが古ければAIが誤った判断をしリスクが増大する。
タニウム最大の特徴は独自の「リニアチェーン方式」という通信アーキテクチャにより、数百万台規模のエンドポイントの最新状態をわずか数秒で把握できること。従来の多くのツールが「昨日のデータ」や遅延した情報で判断するのに対し、タニウムは「今この瞬間」の実データをリアルタイム取得し、可視化・制御を可能にしている。この圧倒的なリアルタイム性が、AIを単なるチャットボットにとどめず、「エージェンティックAI(現場で自律的に意思決定・行動するAI)」へと進化させ、システム全体を自律化する。その完成形が「Autonomous IT」だとストリートマン氏は強調した。
「Autonomous ITは、何が機能しているかを学習し、リスクのある変更から皆様を遠ざけます。人間は『ループの中(in the loop)』で作業に追われる立場から、『ループの上(above the loop)』で意思決定を行う立場になるのです」(ストリートマン氏)
これは、AIによって単に人の仕事が奪われるのではなく、より高度な意思決定や判断へとシフトできることを意味している。SailPointのCIOであるスリーヴェニ・カンチャルラ(Sri Kancharla)氏はこの理念に共鳴し、自社を「カスタマー・ゼロ(最初の顧客)」と位置づけ自ら変革に取り組んできた背景を語った。「IPO(新規株式公開)という重要な局面で、セキュリティをすべての中心に据えつつ開発チームの負荷軽減も重要だった」とし、これは多くのリーダーが直面する現実であると示した。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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