「光速Serendie作戦」が生んだ奇跡
2025年1月、Serendie Street Yokohamaがオープンした。当初は「本当に人が集まるのか」という不安があった。中には「有名人セミナーを月1回やりましょう」という提案もあった。
「『いらん』と答えました。人は、営業マンが連れてきて自然に集まるからいいです(笑)」(朝日氏)
朝日氏の読みは当たった。三菱電機の営業は、顧客と多くの繋がりを持っている。新製品の説明は新製品が出る時にしかできないが、新しい場所や技術を紹介することはいつでもできる。営業マンが次々と顧客を連れてきた。
ただし、見せるものがなければ意味がない。そこで「光速セレンディ作戦」を展開した。動かなくてもいい、フェイクムービーとPowerPointで「それらしいもの」を急遽作成し、展示したのだ。結果は予想以上の盛り上がり。「ミラクルという感じ」と朝日氏は語る。
この「光速セレンディ作戦」が成功したのも、匠Methodとアジャイルの文化があったからこそだ。完璧を目指さず、まず価値の仮説を形にして顧客と対話する。そのフィードバックを即座に次の改善に活かす。この循環が、Serendie Street Yokohamaを「予想を超えた化学反応」の現場に変えた。
新しい100年企業モデルへ
2030年度までにSerendie関連事業で1兆1000億円規模を目指す三菱電機。そのためには500〜1000の新たなアイデアを生み出し、100〜200を実際に事業化していかなければならない。
「アイデアの卵をどんどん産み、素早く育て、社会実装する」──この循環を実現するために、三菱電機は3つの要素を統合した。
1つ目は「匠Method」による価値起点の思考。顧客に本当に提供したい価値から発想することで、従来の製品思考の枠を超える。
2つ目は「アジャイル文化」による高速実行。毎朝15分のデイリースクラムで意思決定し、短いサイクルで検証・改善を繰り返す。
3つ目は「Serendie Street」というグローバルな競争の場。部門を超え、企業を超え、多様な専門家が化学反応を起こす空間。
この3つが揃ったとき、「手離れの良い製品」を作ってきた老舗製造業は、「顧客と繋がり続ける」価値創出企業へと生まれ変わる。
朝日氏は期待を込めてこう語る。「横浜の共創空間には1日当たり平均10社以上が訪れ、様々なアイデアが生まれる。匠Methodを使えば、アイデアの卵をうまく膨らませられるのではないか」
Serendie Streetを舞台にした三菱電機のチャレンジが、100年企業を新たな価値創出の担い手へと変えるロールモデルとなる日は、もうすぐそこまで来ている。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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