業界横断のコミュニティは、当事者たちの「心」を動かす場
──これまでの話を踏まえて、金融IT協会が提供する「コミュニティ」について具体的に教えていただけますか。
山口氏:人材育成の観点では、金融IT検定の合格者にコミュニティを提供しています。法人向けのイベントと、個人ベースで参加できる合格者向けのコミュニティの2つの柱を用意しています。
個人ベースのコミュニティは、上司に断る必要もなく、「他社は何をやっているのかな」くらいの気軽な気持ちでお越しいただける場になっています。法人の看板を背負わずに、普段は営業店にいらっしゃるような方も参加できる出会いと学びの世界にしていきたいです。
岸氏:人材育成にしろビジネスにしろ、必ずベストに近いプラクティスというものがあります。まずはそれを知ることが大切なのですが、部署や社内に閉じこもっているとなかなか見えてきません。たとえば、住友生命は「Vitality」のような健康増進型保険を作りましたが、その先例と、そこで得たノウハウを知っているからこそ、当社では紆余曲折せずにできるようになったことがたくさんあります。
かつての日本企業には「人に(社内のノウハウを)ペラペラ喋るな」という風潮が少なからずありました。しかし私としては、日本の将来を想うと「下の世代に申し訳ない」という気持ちがあって、生きているうちにできるだけスキルやノウハウをすべて提供したいと思っています。

──DXに携わる方の中には、決して自分から手を挙げた方ばかりではないと思います。ある日突然DX推進部長になった方や、会社や他部門からの要求でなんとなく取り組んでいるIT部門の方もいらっしゃるはずです。そんな方々のモチベーションを高める方法はありませんか。
岸氏: 自分の興味と会社の仕事が一致しているか、あるいはそれを触発して刺激することが大切だと思います。金融IT協会では、そのためのワークショップも開催しています。
多くの場合、結局はマインドなんです。ずっと誰かの要求で物を作るとか、正確に作らなければ叱られるといったメンタリティでは、自分で何かを能動的に作るのはやっぱり難しいです。そこから解放されれば、もっと事業にも興味が持てるようになると思います。
先ほど山口さんが紹介した合格者コミュニティも、マインドを刺激する場だと私は考えています。事例を見せる、成功した人に話してもらう。そして「自分もそうなりたい」と触発される。そこで見せるのは夢、未来なんです。保険の未来、証券の未来、銀行の未来……。未来を語ることで変わっていく人がいます。能力を身につけたから変わるのではなく、心が動くことで変わるのです。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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