2025年12月24日、セキュリティの信用評価プラットフォーム「Assured」は、従業員数1,000名以上の大手企業に所属する情報システム・セキュリティ部門500名を対象に、自社への直接的なサイバー攻撃やセキュリティインシデント、取引先に起因したセキュリティインシデントの経験有無ならびに経済的損失の実態を調査したと発表した。
調査結果
1. 10%が10億円超の損失 1ヵ月以上の業務停止または重大な支障が14%と影響長期化
セキュリティインシデント経験有りと回答のあったうち、10%が10億円以上の経済的損失を被っていることが判明した。また、1000万〜5000万円未満が12.5%と被害額を把握しているカテゴリの中で最も高い割合を占める結果となっており、セキュリティインシデントによる経済的な損失は、復旧・調査費用、賠償、機会損失などの対応コストが積算された結果、多くの企業で数千万円規模に達するという実態が浮き彫りとなっているという。
また、セキュリティインシデントにより、業務が停止または重大な支障が出た期間は「1週間未満」が最多である一方、「1ヵ月以上」の長期化も14.2%に達している。一度セキュリティインシデントが発生すると、復旧までに長期化を要し、事業へ甚大な影響を与えるため、被害が拡大する前の段階でセキュリティインシデントを食い止め、対応期間を最小化するための経営努力が求められているとのことだ。
2. サプライチェーンリスクの起点はITサプライチェーンが最多
自社への直接的なサイバー攻撃やセキュリティインシデントを「経験したことがある」と回答したのは全体の66.8%に達しており、大半の企業が直接的な脅威に晒されている実態が示されている。最も多発しているマルウェア・ランサムウェア感染(36.8%)は、企業の事業継続にも深刻な影響を及ぼす事例も起きているという。
また、取引先に起因したセキュリティインシデントは58.2%が経験していた。この結果から、取引先を含めたサプライチェーン全体のリスクが深刻化しており、取引先企業におけるセキュリティインシデントが、自社事業に影響を与える事例が発生していることが分かる。具体的には、取引先がマルウェア(ランサムウェア含む)による被害を受けたことにより、「自社業務の遅延・停止が発生」(28.8%)、「自社の機密情報や個人情報の漏洩が発生」(25.0%)、「取引先のシステムを経由したマルウェア感染」(17.0%)といった被害が確認されているとのことだ。
加えて、インシデントの起点となった取引先としては、「システム開発・運用・保守委託先」(50.2%)が最も多く、次いで「クラウドサービス事業者」(37.5%)、「データセンター事業者」(28.9%)が続いた。これは、企業活動において、なくてはならないITシステムやクラウドサービスに関連する取引先が起因となりやすく、ITサプライチェーン全体でのリスク対応が喫緊の課題となっていることを示しているという。
3. サイバー保険の加入状況と、インシデント後対策強化のボトルネック
サイバー保険への加入状況について尋ねたところ、「加入している」は全体の58.6%に留まった。10億円以上の巨額被害が発生し得る現状を鑑みれば、経営層は自社のサイバーリスク対策を経営課題として捉えるとともに、完壁に防御することが難しいことを前提に、サイバー保険の加入や補償額の見直しなど、実態に即した対応を視野に入れることも重要だとしている。
インシデント発生後の対策強化における最大の障壁として最も回答率が高かったのは、「対策を推進・運用する人材(リソース)の不足」で過半数(50.4%)に達している。次いで、「対策に必要な専門知識・ノウハウの不足」(41.3%)が続き、インシデント後の緊急性の高い状況下であっても、専門的な知識やそれを実行するリソースの確保が最も大きな課題となっていることが示されているとした。また、「経営層の理解不足」(28.5%)や「予算確保の困難さ」(23.4%)も約4人に1人が回答しており、セキュリティ対策を経営課題として位置づけ、必要なリソースを確保するための経営層の意識改革が重要となっているとのことだ。
調査概要
- 調査主体:セキュリティの信用評価プラットフォーム「Assured」
- 調査対象:全国、従業員数1,000名以上の企業に勤める情報システム・セキュリティ担当者
- 有効回答数:500名
- 調査時期:2025年12月
- 調査手法:インターネットリサーチ(調査協力:クロス・マーケティング)
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