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2025年夏号(EnterpriseZine Press 2025 Summer)特集「“老舗”の中小企業がDX推進できたワケ──有識者・実践者から学ぶトップリーダーの覚悟」

財務・会計Online Press

「システムに会社を合わせる」──1,000人の中堅企業がConcur導入で“ノンカスタマイズ”を貫く

20年来の“負の遺産”から学ぶ、システム刷新を成功に導く流儀

決めたからには「使い倒す」中堅企業がコンカーを採用したワケ

 共通基盤の構築が進む中、石垣は新たな課題が勃発した。それはインボイス制度(2023年10月開始)、電子帳簿保存法(2024年1月開始)といった経費精算にかかわる法改正である。同社は既存システムでの対応を検討したが、1申請あたり従来比で倍近い工数になることが発覚したのだ。これを機に、業務効率化につながる経費精算ツールを選定した結果、同社は「SAP Concur」を選定した。

 決め手は、製品の思想にあったという。Concurが掲げるのは「精算業務をなくす」。同社は「5つのレス」──承認レス/キャッシュレス/ペーパーレス/入力レス/運用レス──人の手を極力介さず、本業に集中できる環境をつくることを目指している。その思想が、機能の隅々にまで行き渡っている。

 実際にゼロにはならないとしても、そうしたビジョンに共鳴した。杉上氏は「コンセプトがシンプルで分かりやすかった」と話す。「初めは外資系らしいと思ったんですけど、それがいいなと。必要のないことはやらない、というクールな割り切りが好ましかった」と中村氏も続ける。単なる効率化ではなく、「人の行動を変える」という他のシステムにはない思想が組み込まれていると感じたという。

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株式会社石垣  企画推進部 企画・広報課 課長 杉上貴祥氏

 しかし、痒い所に手が届く仕組みゆえ、利用コストは高くなる。中村氏自身も大企業向けのイメージがあり、グループ1,000人規模の石垣には正直、値が張るものだった。だが、「だからこそ標準機能を最大限に活かして『使い倒す』と腹が決まった」と中村氏は言い切る。そのために、「ノンカスタマイズで導入する」「システムを会社に合わせるのではない」「会社をシステムに合わせること」をConcur導入のポリシーにした。

変えるのは「現場」 社内権力を握るキーマンたちを取り込む

 ノンカスタマイズで導入すると決めた以上、システムではなく、従来業務や規定を見直す必要が出てくる。

 鍵を握るのは、実際に業務に従事する社内のキーマンたち。miyoruのプロジェクトでの教訓から、プロジェクトを始めるときは「変化の影響が大きい人」から抑える方針にし、まずはキーマンたちから賛同を得ることを優先した。

 Concur導入で抑えるべき相手は明確で「総務」と「経理」である。中村氏は休憩時間の雑談から「ちょっとこんなの考えているんですけど」と切り出し、相手の反応を見ながら方向を探ったという。反応がイマイチであれば資料を作り直し「こっちでいいですよね」と一つ一つ確認しながら、少しずつ進めていった。

 「プロジェクトから始まる前に相談すると、キーマンたちは喜んで一緒に考えてくれました」と中村氏。総務のキーマンはルール変更の味方になり、経理のキーマンはコストに関わる判断を後押ししてくれ、円滑なプロジェクト進捗ができた。

 石垣ならではの組織構造も一役買っている。3人の肩書をよく見てほしいのだが、企画推進部の中に経営企画課、情報システム課、企画・広報課が同居している。さらに人事交流も活発で、情報システム部門を経験した「卒業生」が各課に散らばっており、「この場面では、この人に声をかけるといい」という“嗅覚”も武器の一つになったという。

次のページ
現場からの“反発”も先回りで、ノンカスタマイズを貫く

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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