「システムに会社を合わせる」──1,000人の中堅企業がConcur導入で“ノンカスタマイズ”を貫く
20年来の“負の遺産”から学ぶ、システム刷新を成功に導く流儀
現場からの“反発”も先回りで、ノンカスタマイズを貫く
導入はゴールではない。そこからが本番だ。経費精算は全社員が使う。次の難問は、6人の情報システム課で、どうサポートを回すかだ。
「『できていたことができなくなる』『前のやり方と違う』という問い合わせが殺到するのは目に見えていました」と岡田氏は振り返る。そこで情報システム課は先手を打つことに。各事業部の管理部門に事前教育を施し、現場で問い合わせを吸収できる体制を敷いた。Concur専用の社内サイトを新設し、マニュアルとFAQを整備。ユーザーへの説明会も重ねた。
それでも要望はゼロにはならない。「AをBにできないか」と具体的な手段を掛け合ってくるユーザーもいたが、ここでカスタマイズに手を伸ばすわけにはいかない。
「まず標準機能を説明する」と中村氏。「ユーザーは(標準機能を)知らずに要望を出していることが多い。ちゃんと説明すれば理解してもらえる」と。それでも収まらなければ、代替手段を提案する。カスタマイズという選択肢は、最初からテーブルに載せない。
こうして標準機能に誘導し続けた結果、「ノンカスタマイズで使い倒す」という当初の覚悟が、いつの間にか現実になっていた。
わずか6人……だからこそ、妥協しないパートナー選びの極意
グループ約1,000人に対し、情報システム課はわずか6人。なぜこの人数で回せるのか。
「正直、自分たちにも分からないんです。本能のままにやっている感じで」と中村氏は謙虚だ。ただ、振り返るとポイントが3つあった。
1つ目は、作業は外部パートナーに任せ、自分たちは考える仕事に全力を注ぐこと。レガシーアプリの刷新がいい例だ。Windows向けの古い.NETアプリをWebに作り変える案件が、現在7本同時に走っている。開発は協力会社に任せ、情報システム課は要件のヒアリングとハンドリングに徹しているという。
2つ目は、協力会社の選び方にこだわること。信頼できるパートナーと長く組めるように、遠方であっても直接会いに行き、波長が合うかを確認するという。3つ目は、やらないことを決めること。「本当に大事な部分」を見極め、それ以外は削る。少人数だからこそ、選択と集中が欠かせない。
情シスが疲れ切っている……「元気にしたい」
取材の終わり、中村氏がぽつりとつぶやいた。
「他社の情報システム部門の方と交流する機会があるが、みんな疲れ切って元気がない」(中村氏)
保守に追われ、要望に振り回され、けれど褒められることは少ない。どこも同じなのかもしれない。だからこそ、伝えたいことがある。
「イベントで登壇するときに意識しているのは、情シスの人たちにも楽しく仕事をしてほしいということ。『元気をもらいました』と言ってもらえることがあって、それがうれしい。情シス部門を元気にしていけたらいいなと思う」(中村氏)
20年の試行錯誤で積み重ねてきた石垣のやり方が、どこかの情シスの力になれたら。中村氏はそう願っている。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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