IT投資ガバナンスをCFOも担う時代、領域をまたぐ連携が重要に
続いて登壇したのは、EYストラテジー・アンド・コンサルティングでリスク・コンサルティング パートナーを務める川勝健司氏だ。IT・セキュリティ関連のリスク評価やDXガバナンス構築に20年以上携わってきた。
川勝氏はまず、CFOや財務部門に求められる役割を3層で整理した。第一層は、組織全体の投資における「IT投資」の位置づけだ。財務戦略・予算計画との整合性を確認し、R&Dや人材投資、M&Aとのバランスを調整する。
第二層は、IT投資全体の管理だ。Capex(設備投資)とOpex(運用費用)のバランスや、大規模ITプロジェクトが資金繰りに与えるインパクトを把握・管理する。「大規模プロジェクトが失敗して減損を招いたというニュースもよく耳にするが、実際には数十億円から100億円規模の減損につながることもある。大規模ITプロジェクトが資金繰りに与える影響の管理が必要だ」と同氏は述べた。
そして第三層は、個別案件の評価だ。ROI(投資対効果)・NPV(正味現在価値)・IRR(内部収益率)といった客観的指標による判断である。
ITコストの構造そのものも変わりつつある。従来は、初期に大規模な投資を行い、その後は業績にかかわらず一定のコストを計上し続ける“固定型”が主流だった。しかし今後は、初期投資を軽くして、ビジネスの成長に応じてコストを変動させるモデルへの移行が進むとされている。ビジネスと連動したITコストの把握や、投資計画・予算計画が必要となるだろう。
IT投資管理の課題に対応するためにも欠かせないのが、「財務・ビジネス・IT」の三者連携だ(図6)。財務部門の力だけでは将来のIT投資予測は困難であり、ビジネス部門との協働が不可欠となる。川勝氏は、「ビジネス部門に対して、本当にIT投資の効果が出ているのかを情報収集するなど、ITコストも含むビジネスにおける今後の収支見通しを知ろうとすることが大切だ」と強調した。
同氏によれば、三者連携を機能させる成功要因は以下3つだ。
- 三者の共通言語となる、網羅的かつ詳細なコスト管理の仕組みの構築
- ITコストをコストではなく投資として捉えさせる、受益者負担原則の徹底
- 手作業に頼らない自動化・効率化の仕組みの整備
「これからの時代は、こうしたきめ細やかなIT投資コストの管理が必要となる。CFOの方々にも、ぜひガバナンスを効かせていただきたい」と同氏。財務・ビジネス・ITが共通の枠組みで語れる体制こそが、テクノロジーリスク時代の企業防衛の要になるとした。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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