Sunとの融合で統合クラウドソリューションを提供できる唯一のベンダーに
冒頭、あいさつを行った日本オラクル専務執行役員 システム事業統括 兼 事業推進統括 大塚 俊彦氏は「融合によりアプリケーションからRISCチップに至るすべてのスタックを、統合的に提供できるようになった」と言う。そして、新しいコーポレートメッセージである「SOFTWARE. HARDWARE. COMPLETE.」を紹介し、フルスタックで顧客の要望に応えられるようになったことが強調された。
「今回のSunとの融合は、クラウドコンピューティングの世界において極めて有効なもの」と語るのは、キーノートセッションを担当した日本オラクル 常務執行役員 クラウド&EA 統括本部長の三澤智光氏。企業統合で提供できる製品やサービスのラインナップが増えただけでなく、両社技術を融合することで、より価値の高い製品、サービスを提供できるようになったと言う。「融合で新しいコンピューティングが生まれ、Oracleはその新しいコンピューティングのための戦略を、これからどんどん打ち出していく」と三澤氏。
氏が特に強調するのが、Sunの統合によりクラウドコンピューティングのIaaSスタックまでも提供できるようになったこと。そして、従来のOracleが続けてきたグリッドコンピューティングで実現するPaaS、この2つを統合的に提供できるベンダーは、世界にOracleただ1つだけだと主張する。
新生OracleではIaaSからPaaSまでを提供
ブレークアウトセッションでは、クラウドサービストラック、クラウドテノロジートラックの2つに分かれ、最新のOracleのクラウドコンピューティング戦略について紹介が行われた。テクノロジートラックの1つでは、システム事業統括本部 システム営業統括本部 統括本部長の野々上 仁氏が、「サンとオラクルの統合がもたらすクラウド環境の進化 - チップからデスクトップまで」と題し、新生Oracleのクラウド戦略について解説を行った。
ここ最近は、いままでITに詳しくなかった経営者にもクラウドへの関心が高まっている。クラウドには迅速性、伸縮性というメリットがある一方、データのガバナンス確保の難しさ、性能に関する課題などもある。多くの経営者はメリットから興味は持つものの、課題面から躊躇する現状もある。両方の要件を満たすのが、現状ではプライベートクラウドだと野々上氏は説明する。
「企業にはパブリックで利用することでメリットが享受できるアプリケーションもあれば、プライベートで利用したいものもある。まずは企業内のサイロ化したシステムをグリッドで共通基盤化して集約し、そこからセルフサービス化、ポリシーベースのリソース管理、従量課金の仕組みなどでプライベートクラウドを実現する。最終的には、パブリックとプライベート双方を必要に応じ適宜利用する、ハイブリッドなクラウド環境を実現していくことになる」と野々上氏。そして、クラウド環境へは一気に移行するのではなく、既存資産を生かし徐々に移行するのが得策だと指摘する。
また、クラウドの実現には仮想化技術は重要だが、仮想化だけで実現できるわけではない。OracleはSunとの統合でサーバーやネットワークの仮想化技術を得て、クラウドのIaaSを提供できるようになった。IaaSの上には、アプリケーション、データベース、ストレージのグリッド技術でPaaSを提供できる。さらに、クラウド上で稼働するアプリケーションを連携するSOA、ID管理やアクセスコントロールなど、企業システムを動かすのに必要なものすべてを提供できるのがOracleなのだ。
「ここで重要なのは、IaaSからPaaSに至るまでを統一的に管理できること」と野々上氏は指摘する。OracleではPaaS部分はOracle Enterprise Manager(OEM)で統一的に管理してきた。加え、Sunが提供してきたインフラ部分の統合管理ツールOps Centerを今回OEMに融合し、クラウド環境すべての統一的な管理を実現している。このIaaSからPaaSまでを統合的に管理できる機能は、Oracleの提供するクラウドの大きな優位性となっている。
クラウドに必要な仮想化ソリューションを大きく拡大
もう1つの特徴は、Oracleのクラウドが伸縮自在であるということ。通常の仮想化は、大きなリソースを細かく分けて使うことには長けているが、Oracleグリッドは細かく分けるだけでなく分散と統合を自由にできる。「クラウドではいらなくなったら捨てられることが必要。グリッドの伸縮自在なところは、クラウドでは極めて重要」と野々上氏。伸縮自在なのは、Oracleグリッドだけだと自信をみせる。
また、融合メリットの1つとして、クラウドのインフラで利用する仮想化技術のラインナップが増えたことにも言及。もともと、Oracle VMという仮想化ハイパーバイザーがあったが、これに加えSun SPARC Enterprise Mシリーズで利用するDynamic Domain、Sun SPARC Enterprise Tシリーズで利用するLogical Domain、すべてのSunのシステムで利用できるSolaris Containersが加わり、用途や目的に応じこれらの選択が可能となった。
さらにストレージにおいても、Oracleのストレージ仮想化技術のAutomatic Storage Managementに加え、Oracle VM Storage Connectの利用でさまざまなベンダー製品によるハイブリッドなStorage Poolの実現も可能となった。また、Oracle Virtual Desktop Infrastructure、Oracle Secure Global Desktop、Sun Ray、Oracle VM VirtualBoxといった技術の利用で、デスクトップの仮想化までもOracleは手に入れたのだ。
さまざまなクラウドの高い要求に応えられるハードウェア
ここから野々上氏は、次世代のクラウド時代に最適化されたサーバーハードウェアの紹介を行った。アプリケーションによって、サーバーに求められる負荷は異なる。並列処理を求めるものもあれば、シングルで高速な処理が必要なものもある。また、ストレージやネットワーク負荷に強いものを求める場合もある。たとえば、オンラインゲームのサイトのサーバーは、1つ1つのCPU処理は軽いが同時に大量のトランザクションをこなすひつようがある。これには、スレッド処理に優れているサーバーが必要となるとのこと。
Oracleでは、さまざまなアプリケーション要求に応えられるハードウェアを網羅する形で用意している。たとえば、マルチスレッドで並列処理に強くストレージI/Oにも高い処理能力が求められる場合にはSPARC64プロセッサを搭載したサーバーを、シングルスレッドで高速な処理が求められる場合はクロック周波数の高いx86アーキテクチャのCPUを搭載したマシンを、クロックは速くないが極めてマルチスレッド処理に強いUltra SPARC Tシリーズプロセッサを搭載したマシンでは、大規模アクセスがあるWebサイト運用などに向く、といった具合だ。
さらなる優位性として紹介されたのが、Flashメモリ技術だ。フラッシュアレイのSun Storage F5100は、2TBものFlashメモリを1台で搭載できる。I/O性能で比較すると、ハードディスク7000本分に相当し、これにはフルラックで14本ものスペースが必要だ。これに対してF5100は、小さなラックマウントサーバー程度の大きさに過ぎず、スペースだけでなく消費電力も大きく削減が可能だ。さらに、このフラッシュメモリはディスクの代わりに利用するだけでなく、Oracle技術との融合でデータベースのメモリ空間としても利用できる。2TBものメモリ空間が確保できればデータベース性能は飛躍的に向上し、これこそが新生Oracleの大きなメリットでもある。
そして、「パブリッククラウドではコモディティ化した安価なハードウェアを大量に導入して利用するイメージがあるが、プライベートクラウドでは基幹系システムを動かすことになるので、信頼性の高い統合型の大規模サーバーを利用することも多い」と野々上氏。さらに、Sun Blade 6000のように、高密度なブレードサーバーもOracleにはある。これは、高い演算能力を発揮し並列処理にも強く、Oracle VMと組み合わせで同じ筐体でSolaris、Linux、Windowsの稼働も可能であり、管理を1つにできるメリットがある。このように、パブリックだけでなくプライベートクラウドのさまざまな要件に応えられるのが、新生Oracleなのだ。
さらに力を入れて紹介したのが、最新のSun Fire x86 Clustered System。Sun Fire X4800は8コア、8ソケットで、最大64スレッドで稼働する。「これは、とくにSolarisで利用すれば高い信頼性のもと、大きな拡張性が得られる」と野々上氏は語る。また、Sun Fire X4470は、高さ3Uの筐体にFlashメモリを576GBも搭載でき、これ1台だけでデータベースサーバーとして大きな性能を発揮できるサーバーだ。
Oracleのハードウェアとソフトウェアを組み合わせで、クラウドの理想のプラットフォームが提供できる。SunとOracleが統合したことで、仮想と物理の整合性もどんどん進化し、これに管理の一元化も加わりまさに「SOFTWARE. HARDWARE. COMPLETE.」を実現するものとなった。「これからもどんどん新しいソリューションが登場する新生Oracleに、さらに期待して欲しい」と野々上氏は自信をみせた。
このようにOracleでは、これらさまざまな仮想化サーバーの要件に最適なサーバー、ストレージ、ネットワークスイッチなどのハードウェアを提供している。極めて大量なメモリを搭載可能、高度なマルチスレッド処理を実現、シリコンディスクも活用し大規模なディスクI/Oを高性能処理できるといったサーバーが用意され、それらを目的に応じ適宜選択が可能だ。
さらに、それらを実際に組み合わせ必要な性能が発揮できるのか、十分な信頼性が確保できるのかといったことの検証も行っている。
コモディティ化したハードをたくさん並べるのはすでに時代遅れ
クラウドサービストラックでは、システム事業統括本部 ソリューション統括本部 プリンシパルセールスコンサルタントの下道高志氏が、「効率性・高信頼性を備えた企業ITインフラを構築する方法 - オラクルが推進するIaaS」と題したセッションを行い、クラウドを前提とした際にどのようなハードウェアを選択すべきかについて解説を行った。
実際に、先進的なクラウド企業はどのようなハードウェアを選んでいるのか。「たとえば、Facebookでは、2000台のサーバーを運用しているが、1200台は8コアのサーバー。残り800台には16コアものCPUを搭載し、12TBのストレージ、32GBのメモリを搭載している。これは、コモディティ化した安価なサーバーではなく、かなりハイスペックなものだ」とのこと。クラウドであっても、用途によってサーバーハードウェアを使い分けているのが現実だと例が示された。
「クラウドは1Uのサーバーを数多く並べればいいという時代ではなくなった」と下道氏は言い、むしろたくさんのハードウェアを並べるのは、もはや時代遅れのアーキテクチャだと指摘。そして、クラウドのIaaSを考える場合には、より集約化を進めることが重要となる。高い集積率に貢献するのがOracleが提供する極めて高度なマルチスレッド処理が行えるチップ技術であり、さらにはFlashメモリのテクノロジーだ。さらに、ネットワークの集約化も重要な要素で、Oracleではネットワークの集約化を実現するためにネットワークスイッチをブレードサーバー内に内蔵する方法を採用している。これによりサーバー同士をケーブルで繋げる必要もない。さらに、スイッチを外出しすると、ルータからサーバーまで4段階の階層で接続しなければならないが、Sun Blade 6000なら2ステップでルータと接続可能で、10GbEという高速なネットワーク性能をロスなく活用できるとのことだ。
IaaSでさらに有効となる技術として紹介されたのが、圧縮技術だ。圧縮してデータサイズを小さくすることで高いI/O性能を発揮でき、大量データを扱うクラウドでは極めて有効だ。「圧縮はこれからのキーテクノロジーだ」と指摘する。Many Core、Many Threadsのチップ、Flashメモリ、高速なノード間通信ネットワーク、圧縮技術の4つが組み合わさることで、圧倒的な処理性能を実現できる。この圧倒的な処理性能により、いままで十分な性能が出ないがために諦めていたことが実現できるようになり、その結果「アプリケーションアーキテクチャを一変させることになる」とのことだ。その1つの具現化の形が、Sun Oracle Database MachineのExadataだと下道氏は言う。
他のベンダーにはないハードウェアの大きな進化、クラウドにおける運用管理のますますな重要性。ハードウェアとソフトウェアの一体化で、これらすべてのクラウドの要求に応えられる。そして、実績のある具体的な製品やサービスを提供できるのが、Oracleのクラウドソリューションと、下道氏は同社の優位性をアピールした。
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