こんなところにデータセンターがある理由
今回おじゃましたのは、livedoorさんのデータセンター。そうですよ。livedoorっていったらあのlivedoorですよ!
livedoorさんといえば、言わずと知れたアレやコレ、そして今ではポータルサイトやblogサービスが有名ですが、実は、法人向けに、日本の企業としては比較的早い時期から、iDC事業を行っており「データホテル」というブランド名で事業を展開しているんですよ。すみません。斜体部分はウィキペディアによるものです。
さて、我々編集部が向かったのは東新宿の某所。たいへんいかがわしい某宿某町に分け入り、たいへんいかがわしい某ホテル街を抜けると、そこはlivedoorのデータセンター「データホテル」。ホテル街なだけに!データホテル!そういうわけでもないようです。
「データホテルはもともとは品川にあったんですよ。2003年に引っ越してきたんです」と語るのは、livedoor ネットワーク事業部の冨成さん。
えー。サービスを止めてお引っ越しですか?そんなこと許されるんですか?
「確かに、営業中のデータセンターをまるごと引っ越すというのは、あまりない事例かもしれませんね。法人向けのデータセンターで「ちょっと止めて、引っ越ししていい?」なんて言ったら、ふつうは頭がおかしくなったのかと思われます(笑)」
ということは、秘密裏に引っ越しを?
「いえ、もちろん許可はとりました。当時は100ラック、2000台くらいのサーバーがあったんですが、1日100台とか決めてですね、夜毎、全部はずして、トラックにつめこんで…って、ちょっとずつ引っ越しをしていました。」
ちなみに、データホテルが入っているビルは、他社さんのデータセンターも入っているため、外観や共有スペースは撮影NGとのこと。と、ここで、察しのよい読者諸氏のみなさまは、第1回目のNTT PCさんの外観、入館時のイメージを思い出していただいたかと存じます。でもまったく違います。
なんというか、もっとそっけない感じです。静脈やら指紋やら虹彩やらの生体識別情報を採取されることはありません。公民館風の受付には守衛風のおじさま。「はい、どうぞ」と入館バッチをもらい、総じてバックヤード感の強い通路、階段、エレベーターを通り、質素な会議室へ。
「ただ単にラック、電源、回線をお貸ししますというデータセンター違い、livedoorのデータホテルは、運用を含めたサービスとして提供しています。運用サービスに強みがあるので、ファシリティには重きを置いていないんですよ」と語るのは広報の澤田さん。「だから特にお見せできるようなものはないんです、本当に…」
やや、そんなに恐れ入らないでください!このコーナーは綺麗なデータセンターを紹介するコーナーではないんです!我々はただ、データセンターが見たいだけなんです!
さてさて、データホテルを利用しているユーザーさんの多くは、自社でWebサービスを提供していたり、Webサービスを受注して開発していたりと、Webビジネス系の企業さんなのだそうです。サービスのポイントは運用にあり。「Webサービスは止めたくない。とはいえ、寝たい」というWeb系企業さんの代わりに運用しまっせ、というわけです。こうした運用込みのおまかせサービスは「フルマネージドサービス」と呼ばれています。
フルマネージドいうだけあって、ユーザーさんがデータセンターへやってくることはほとんどありません。質素なファシリティにはそういう理由があったりします。質素なファシリティ。今回のキーワードですよ。
いわゆる「ハコ貸しメイン」なのか、「サービスメイン」なのか、データセンターのコアコンピテンシーによって、ファシリティにも違いが出てくるというわけですね。はい。だんだんわかってきました。データセンターっていってもいろいろある!
冨成:「いちおう、普通のデータセンターの設備は備えています。電源は3相3線。ガスタービン、UPSが入ってて、止まりませんよっていうのはごく一般的な感じの…。あまり珍しくない。自家発電、空調、消火設備。どこもそんなに変わりません…普通です…とくに取材して記事になるようなことは…」
またもや!しきりに「普通」をアピールするみなさん。そうは言うものの、我々にしてみれば、まだデータセンター2件目。「普通」とはいったいどういうものかしら?それはそれとして、そこはかとなく湿っぽい空気が漂い始めたので、さりげなく話題を変えてみることに。
ええとええと、普通っていっても場所がけっこう普通じゃないですよね。なぜ、歌舞伎町にデータセンターなんでしょうか?
「なんで選んだかっていうと単純にビジネス的に都心部のほうがやりやすいってこと。今は本社も西新宿にありますしね。あと、一度もサーバーをみたことがないようなお客様でも、都心部にあるとなんか安心するという。不思議なものなんですけど…」と語るのはデータホテルの主、オペレーショングループの平井さん。
本社がある西新宿から、データホテルまで徒歩15分程度。データホテルには総勢40名のエンジニアが3交代で詰めています。そして、本社にいるスタッフも、何かあれば駆けつけられる距離。
冨成:「ビジネス的に見ても、引っ越してよかったです。あと、深夜でもご飯を食べられるところがたくさんあるのもうれしいですね」
なるほど。「運用サービス」にこだわり続けた結果としての新宿という判断といえそうですね。
そしてもう一つ、新宿にデータセンターを置く大きなメリットに電源の問題があるんだそうです。
平井:「電源ということでいえば、東京でも山手線の外だと、電源の系統数がかなり減るんです。バックアップ電源の容量もかなり減る。その点、都市機能が集中している場所、都庁のある新宿や、あと霞が関あたりは電気のインフラが手厚い。スポットネットワークっていうんですけど、これ、ものすごくお金のかかる設備なんですね。なので、首都圏、関西圏など都市機能的に重要なところだけ、3系統で電力がきています。普通は2系統です」
でた!3系統!普通は2系統です!ここは3系統です!普通じゃないです!
これは初耳でした。というわけで、新宿、大手町には、けっこうデータセンターが集まっているのだそうです。土地的には全然余裕なさそうですけど、電気的には余裕があるというわけですね。
ちなみに、ここ数年でいうと、電源的に落ちたのは1回だけ。江戸川沿いの送電線にクレーン船が引っ掛かって都内が大停電になったときだそうですが、1系統落ちたくらいではガスタービンも動かないそうです。1系統ごときでは!
平井:「ガスタービンは大地震がでも来ない限り、動かないんじゃないですかね。イメージですけど。それでもここは止まりません」
なるほど。3系統の余裕なのであります。