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新技術LTAPを発表────Databricks年次イベント「Data + AI Summit」開幕

 米現地時間2026年6月16日、Databricksは米国・サンフランシスコにてフラグシップイベント「Data + AI Summit」を開幕した。同イベントは6月15日から4日間にわたり開催され、過去最大となる100,000人以上が登録し、31,000人超が現地参加している。

 初日の基調講演に登壇した、Databricks 共同創業者 兼 CEOのアリ・ゴドシ(Ali Ghodsi)氏は、現在のエンタープライズAIが直面している課題を指摘。「AGI(汎用人工知能)には、既に到達している」と切り出すと、多くの企業では“AIの知能”ではなく「コンテクスト」が不足していると強調した。

 データがサイロ化していることにより、AIが誤った回答を出してしまうハルシネーションをはじめとした、現状のAI活用に係る課題を打破するため、4つの課題「Choice(選択肢)」「Control(制御)」「Cost(コスト)」「Context(文脈)」を解決することが重要だとする。そして、そのためには新たなパラダイム「Agentic System of Record(エージェンティックSoR)」への転換が必要だと訴えると、基調講演では多数の新機能やサービスが発表された。

Databricks 共同創業者 兼 CEO アリ・ゴドシ(Ali Ghodsi)氏
Databricks 共同創業者 兼 CEO アリ・ゴドシ(Ali Ghodsi)氏

 今回、大きな注目を集めたのが新たなアーキテクチャである、「LTAP(Lake Transactional/Analytical Processing)」の発表だ。LTAPは、ストレージ層でCPUの余剰リソースを活用することで、システムにデータが書き込まれると同時に、行指向のトランザクションデータを列指向フォーマットへと変換・保存する。CDCやETLパイプラインを利用せず、パフォーマンスを落とすことなく、最新のデータをそのままAIなどに利用できるようになるという。

 あわせて、リアルタイム分析向けに、機械学習を用いて最適なアルゴリズムを予測・選択する新エンジン「Reyden」を搭載した「Lakehouse//RT」のベータ版提供が発表された。データをコピーすることなく、Unity Catalogで管理されたDelta LakeやApache Icebergのテーブル上で直接クエリを実行できる。なお、テスト環境では、数万のアクティブユーザーやAIエージェントが同時にアクセスするような環境下でも、ミリ秒単位の遅延に抑えるというパフォーマンスを実証した。また、サーバーレスPostgres「Lakebase」には、フルマネージドのクロスクラウド・ディザスタリカバリや、1秒未満で安全なテスト環境を構築できるブランチ機能が追加されるなど、ミッションクリティカルな運用基盤としての強化が図られている。

 さらに、企業データにおけるコンテクストを理解できるエージェンティックAI群「Genie」も強化された。その中核となる「Genie Ontology」は、データレイク上の構造化データに加えて、Google DriveやSlackなどの非構造化データから継続的にナレッジを自動抽出する。それらのデータは独自の「OntoRank」アルゴリズムで権威性や利用頻度などを評価され、企業固有のナレッジグラフとして自動構築されるとのことだ。これまでよりも正確な推論が可能となり、複雑なデータ分析において汎用的なエージェントの正答率(52.4%)を大きく上回る84.5%の高精度を記録したとのことだ。既にPepsiCo社では調達業務向けにGenieを導入しており、数週間で3万回以上のクエリが実行されるなど、従来のレポートから対話型システムへの移行が進んでいるという。

 また、データパイプラインの障害を自律検知・修復するエージェント「Genie ZeroOps」も発表された。Genie ZeroOpsは、障害を検知すると原因を特定して修正コードを提案するだけでなく、本番環境に影響を与えないように「シャドークローン(Shadow Clone)」を作成し、事前にシャドークローン上でコードを自動実行することで、安全性を担保できるのか検証した上でプルリクエストを作成する。

 他にも、業務特化型アプリケーションや、AIを管理するための機能拡張も明かされた。マーケティング領域では、顧客データとAIモデル、エージェントをシームレスに統合するエージェント型CDP「CustomerLake」のプライベートプレビューが開始された。また、セキュリティ分野においては、PythonベースのSIEMを提供するPanther社の買収合意が発表され、今後データレイク上でサイバー脅威検知から対応までを自動実行するエージェント型SIEM「Lakewatch」への統合が予定されている。

 さらに、ガバナンス面では、Linux Foundationのホストのもと、データだけでなくAIモデルやエージェントのスキルまでも組織間で安全に共有できる新しいオープンスタンダード「OpenSharing」の一般提供が開始され、新たにApache Icebergクライアントにも対応した。加えて、社内で乱立するAIモデルやエージェントの利用状況、トークン消費量を単一のコントロールパネルで一元管理し、予算上限の設定やセキュリティ監査を可能にする「Unity AI Gateway」も発表されると、AIの統制を支援する姿勢が示された。

 なお、基調講演の終盤には、OpenAI 共同創業者のグレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)氏も登壇し、データとAIが統合されたプラットフォームの重要性について対談が行われた。ゴドシ氏は最後に、これらすべての基盤こそがエージェント時代の新たなパラダイムになると強調し、初日の幕を閉じた。

 なお、Data + AI Summitで発表された内容については、EnterpriseZineで後日詳細をレポート予定だ。

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この記事の著者

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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