会話型UIが変わった、ユーザーは使い慣れた環境でWorkdayを利用可能に
WorkdayがSanaを買収した背景には、決定論的なシステムであるWorkdayをSanaの“確率論的エージェントレイヤー”で補完する狙いがあったと見られる。
LLMは優れた推論能力を発揮するが、毎回違う出力結果を出してくる。しかし、人事や財務の仕事とは、入力に対して常に一貫性のある出力が必要な領域であり、創造性に富んだ結果を示す必要がない。
買収前のSanaが提供していた製品の1つに、組織内に散在するナレッジを自律的に収集・統合し、業務を実行するナレッジエージェントの「Sana Agents」というものがある。Workdayは、前述した人事や財務のニーズに応えるべく、Workdayアプリケーションの上にこのエージェントをインターフェースのレイヤーとして被せることで、人事や財務の仕事のための「フロントドア」を作ろうと考えた。これが買収の意図である。

こうして、会話型インターフェースを備えた「Sana Enterprise」の提供に至った。「今年の有給休暇の残日数」のような社内情報の検索、「売上予測を6,000万円に上方修正する」といったアプリケーションやツールの操作、「採用総コスト、男女採用比率、要員計画の最新状況」などを可視化するダッシュボードの作成、さらには「メールに添付されている領収書から経費金額を抽出し、経費精算レポートを作成して、内容を確認したあとにクリックでレポートを提出する」といった複雑なワークフローの実行まで、Sana Enterpriseの環境から外に出ることなくWorkdayで完結できるようになった。
加えて、「Sana セルフサービス エージェント」も提供する。これまでは、従業員が社内で何かの申請処理を行う場合、必ずWorkdayの画面上で操作を行う必要があった。しかし、既にMicrosoft 365 Copilotのような他のAIツールを使いこなしている人にとっては、わざわざWorkdayの画面を立ち上げるのは不便に感じるかもしれない。そこで、Sana セルフサービス エージェントにより、セキュリティやガバナンスはそのままにMicrosoft 365 Copilot側からWorkdayを利用できる環境を実現した。もちろん、Workdayを使い慣れているならば、Workdayの画面上で作業してもよい。
このエージェントを使うことで、定型的な問い合わせであれば、人事部や経理部を煩わせることなく疑問を解決できる。なお、今後もWorkdayの画面が消えることはない。Sana EnterpriseやSana セルフサービス エージェントは新たに登場したヘッドレスオプションであり、個々のユーザーにとってはUIの選択肢が増えた格好だ。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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