元陸将 廣惠次郎氏が日本の「サイバー戦」能力強化に向けて期待すること──官民連携の発展を阻む課題
サイバーセキュリティ庁の設立、国産版Mythosの開発、地方のサイバー防衛体制整備など……
2026年6月20日~21日の2日間にわたり、静岡県熱海市にて「サイバー防衛シンポジウム熱海2026」が開催された。EnterpriseZineでは、本シンポジウムにて展開されたセッションでの講演・ディスカッションの様子を、数回にわたりレポートする。本稿でお届けするのは、元陸将で、本シンポジウムの大会委員長を務める廣惠次郎氏の講演と、同氏に対するインタビューの内容について。日本のサイバー戦能力向上に向けた官民連携の今後に期待することとして、「サイバーセキュリティ庁の設立」「国産版Mythosの開発」など、興味深い意見も飛び出した。
激動する安全保障環境、だからこそ「サイバー戦に向けて力をひとつに」
今年で7回目を迎えたサイバー防衛シンポジウム熱海。チケットは発売開始からわずか数分で完売し、当日は雨天だったものの全国各地から参加者たちが訪れた。そして今年は、これまで大会委員長を務めてきた伊東寛氏(初代陸上自衛隊システム防護隊長)の後を継ぐ形で、廣惠次郎氏が同ポストに就任した。
廣惠氏は、2025年8月の退官まで陸上自衛隊で教育訓練研究本部長を務めた人物だ。通信科の幹部としてキャリアをスタートし、その後は統合幕僚監部で指揮通信システム部長を務め、任期中にサイバー防衛隊を立ち上げる。サイバー部隊を北海道から九州まで全国に配置し、現在の陸上自衛隊におけるサイバー防衛の体制を築き上げた。2025年11月には、GMOインターネットグループのグループサイバー防衛事業推進本部(略称:GMO-6)に、本部長として参画した。
越後湯沢、南紀白浜、道後、九州、熱海の5ヵ所で毎年開催される温泉シンポジウムだが、その中で熱海はもっとも「国家防衛」の色が強いシンポジウムとなっている。参加者の多くが国家の安全保障に携わっている、あるいは強い関心を持っており、大会の実行委員会も、約半数が元自衛官、予備自衛官、あるいは元国家公務員で構成されている。
今年の熱海のテーマは「サイバー戦に向けて力をひとつにしよう」──背景には、安全保障環境の急激な変化がある。たとえば、AIがサイバー戦のツールとして実際に使われ始めていることや、海底ケーブルのような重要インフラにまでサイバー脅威が及んでいること。さらには、サイバー戦が世論工作や情報戦などの「認知戦」と緊密に結びついて語られるようになってきていることなどが挙げられた。こうした複合的な脅威に対抗するためには、官民連携や産官学連携が不可欠となる。そこで、当事者すべてが力をひとつにして立ち向かわなければならないという想いがテーマに込められた。
同時に、国の動きも大きな転換点を迎えている。能動的サイバー防御の関連法案が、2026年から実装に向けていよいよ具体的に動き始める。そして数年前から、サイバー空間は陸・海・空・宇宙に続く「第5の戦場(ドメイン)」として位置づけられるようになった。
サイバー戦においてもっとも重要となるのは「人」である──そう廣惠氏は力説し、強固なコミュニティの発展に本シンポジウムが貢献することへの期待と熱意を述べた。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内・海外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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