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元陸将 廣惠次郎氏が日本の「サイバー戦」能力強化に向けて期待すること──官民連携の発展を阻む課題

サイバーセキュリティ庁の設立、国産版Mythosの開発、地方のサイバー防衛体制整備など……

民間企業が「サイバー戦」能力向上に協力するメリットはあるのか?

 大会期間中、廣惠氏は記者の囲み取材に応えてくれた。そこで交わされた質疑応答の内容を紹介する。

【質問1】サイバー戦に向けて力を結集するうえでは、官民の枠を越えた情報共有が大きなテーマとなる。これまで、民間側からの(サイバー攻撃被害や脅威情報などの)情報提供が滞っていることが課題とされてきたが、どう感じているか。また、この状況を打開するためにどういった対策が必要か。

廣惠氏:陸自時代から官民連携に取り組んできたが、思った通りにはなかなか進まないことを実感した。ただ、横断的な協議会の枠組みが少しずつ出来上がってきており、国家サイバー統括室がこれをさらに拡充しようと具体的な政策を打っている。そのため、今後はもっとスムーズに進んでいくのではと期待している。

 今後、もっとも重要となるのは「官側のリーダーシップ」だと考える。官民連携というものは、官側が旗を振ってリードしなければいけない。民間側だけで旗を振るのはハードルが高い。官がリーダーシップを発揮することで、民間側も参画しやすくなる。

【質問2】民間側が「情報を提供しにくい」と感じる具体的なハードルとは何か。加えて、官がリーダーシップを発揮する際、国民の懸念を解消するための世論形成のハードルにはどう向き合うべきか。

廣惠氏:これまで、民間側にとって「どういう目的で情報を提供してほしいのか」が不明瞭だった側面がある。これでは「情報を出すことで不利益を被るのでは」という懸念が企業に生まれてしまう。また、日本では被害に遭った際の内部情報などを出すと、「なぜこうなってしまったのか」「誰かのミスではないのか」と犯人捜しや責任追求をし過ぎる文化がある。

 対して米国では、情報はすぐにみんなでシェアしようという前向きな文化が存在する。日本も、どこかがサイバー攻撃を受けた際に、単に責任問題に発展させるのではなく、情報を共有して日本全体として対応・防御していくという、前向きかつ明確な目的のために共有を促すことが重要だと考える。加えて、報告のフォーマットや手順を細かく規定し、情報共有しやすくする工夫も必要だろう。

 ただし、現状として最低限のセキュリティ対策すらやっていない民間企業も存在するため、そうした組織ではどうしても責任追及の形になりやすい。また、どこか脆弱な企業が一社でも存在すると、そこを踏み台にしてサプライチェーン全体に被害が及ぶ。そのため、すべての関係組織が最低限の対策(自賠責相当)をすることがまずは必要ではないか。そうすれば、最低限の説明責任が果たせるため責任追及の形にはならず、「これを教訓にしよう」という文化が育ちやすくなる。

「サイバーセキュリティ庁」を新設すべきでは

【質問3】民間側におけるセキュリティの動きとして、経済産業省が主導する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」が施行されようとしている。この動きは、官民の情報共有やサイバー戦能力の発展に寄与しうるか。

廣惠氏:経済産業省や総務省が個別に進める産業界向けの政策は、それぞれ意味のあるものであり、サイバー戦能力の向上にも寄与するだろう。特に、サプライチェーン問題は国家安全保障の観点からも極めて重大なリスクであり、SCS評価制度が果たす役割は大きいと考える。

 ただ、各省庁が個別で進める政策には、どうしても縦割り感が出てしまう。そのため、各政策を国がどうトータルコーディネートしていくかが重要。その役割を国家サイバー統括室に期待している。個人的には、国家サイバー統括室をさらに格上げして「サイバーセキュリティ庁」を創設し、他省庁のセキュリティ政策を束ねるような形になると良いのではと考えている。

【質問4】サイバーセキュリティ庁の新設が、縦割りの再生産を招く懸念はないか。

廣惠氏:これは国家公務員の育て方、すなわち人事制度の問題である。国家サイバー統括室もそうだが、現在は各省庁から人材が寄せ集められて組織が組成されている。そのため、メンバーはそれぞれ人事評価が自分たちの所属省庁で行われることを意識してしまう。忠誠心も各省庁へと分散している。これでは、利害関係や意思疎通において問題が生じやすい。

 よって専門の省庁を新たに設立する場合、他省庁からの出向ではなく、そこでプロパーの人材を独自に採用し、他省庁の関連部署を経験させながら専門的に育成していく必要があると考える。

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“国産版Mythos”は実現可能か?

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この記事の著者

名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)

サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内・海外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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