元陸将 廣惠次郎氏が日本の「サイバー戦」能力強化に向けて期待すること──官民連携の発展を阻む課題
サイバーセキュリティ庁の設立、国産版Mythosの開発、地方のサイバー防衛体制整備など……
日本は地方が弱すぎる、ウクライナでは全土にサイバー防衛体制が整っている
【質問9】(本シンポジウムの開催地である)静岡県は、全国で初めて警察と行政が連携する「サイバーセキュリティ戦略本部」を設立した県だが、具体的に何をどう進めるかは手探り状態である。国としては新たな政策が進む中で、地方や各自治体レベルの現場とはどう情報を連携し、指導を行い、人材を育成していくべきか。
廣惠氏:日本のサイバーセキュリティにおける大きな問題として、「地方が弱い」点が挙げられる。意識・対策・組織・資金といったすべての面で東京が断トツで抜けており、本格的な実績があるのも東京都のみという現状。
これに対し、2020年に私がウクライナに赴いた際、同国では地方でもサイバー防衛の体制が整っていることに驚いた。この体制が、2022年に始まったロシアの侵攻に対し非常に上手く機能した。ゼレンスキー大統領がウクライナ全土にビデオメッセージを配信しつづけられている背景にも、この体制の存在がある。
地方の強化は、日本国全体にとって喫緊の課題だと言ってよい。実際、名古屋港など地方で重大インシデントが発生しているわけだが、地方で十分な演習はできていないだろう。また、こうしたサイバー系シンポジウムなどの開催も、西日本に偏っており、東日本では活発ではない。国家サイバー統括室が地方自治体のサイバー関連部署とつながりを持ち、ノウハウや情報の共有、教育をスムーズに促す仕組みが必要だと考える。
ボランティア開発の指揮システムが、自衛隊でも導入可能になるかも?
【質問10】有志やボランティアが開発し、軍に提供することで意思決定や作戦指揮を支援する、たとえば米国におけるパランティア(Palantir)の「メイブン・スマート・システム(Maven Smart System)」のようなシステムの国産版を自衛隊が採用するシナリオはあり得るか。
廣惠氏:大いにあり得る。昨年までは、そうしたボランティア開発の指揮システムにおいては、欧米に水をあけられて日本では難しいと思っていた。しかし、Claude CodeなどのAIコーディングが出現して開発環境が大きく変わったことで、考えが変わった。エンジニアでない者でも開発が可能となったうえ、プロのエンジニアに至っては1ヵ月かかっていたコーディングが1~2日で可能となったため、開発費も大幅に削減できるようになった。こうした環境であれば、日本版Mythosや国産指揮システムも十分に開発できるだろう。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内・海外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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