「ただの法令対応」では投資家に届かない──2027年から本格化するSSBJ基準を戦略に変える条件
金融証券取引法の改正、コーポレートガバナンス・コード改訂……押さえておきたい情報開示の最新トレンド
国際的なトレンドの変化 日本の立ち位置は?
元々、国内におけるサステナビリティ情報開示制度の議論は、欧州や米国での動きを受けて本格化したものだ。主要各国の動きからやや遅れるものの、そこに続く形で対応しようという空気はできあがっていた。しかし、2025年1月の第二次トランプ政権の発足で状況は一変する。気候変動対策は、米国内で扱いにくい政治的テーマとなってしまった。とはいえ、カリフォルニア州では独自の気候関連開示州法が制度化されるなど、州レベルでは熱心なところもある。
一方、欧州では制度自体は維持しつつ、実施負担の重さを踏まえて大幅なスリム化に動いた。EUの「CSRD(企業サステナビリティ報告指令)」は、2026年3月の簡素化で、対象企業の約9割削減、データポイント(開示項目)の大幅な整理、および適用時期の2年延期が決まっている。また、南半球に位置する国々では、2025年1月から豪州が開示の段階適用を開始した一方、ブラジルでは義務化方針を撤回し任意開示に転換するなど、地域・国によって違いが見受けられる状況だ。こうした中、あらためて日本が想定する対象企業数や開示項目数を見ると、欧州の簡素化後の水準と比べても平均的な制度設計に見える。
とはいえ、実務上の悩みは尽きない。その筆頭として、関口氏が挙げるのは「データ収集の正確性」である。サステナビリティはシステム化の難しい領域であり、どうしてもExcelとメールによる手作業が中心になるため時間がかかり、ミスも生じやすい。さらに、適用対象企業にはグループ会社を抱えるところも多く、子会社から協力を得にくいという問題もある。これまで形式的な対応で終わらせていた場合には、開示内容を投資家がどこまで読み込み、対話に活用するのかも見えにくい。だが、義務として形式的な対応に終始するだけでは、本来求められる対話材料として機能しないだろう。
加えて、「組織内の分断」も“投資家との隔たりがある”開示の要因となる。日本企業においては、対応の主体がCFO配下の経理部門、サステナビリティ専門部署のどちらかに分かれてしまう傾向がある。関口氏は、どちらにも一長一短があると指摘した。経理主導で対応する企業は、データ収集基盤や情報の集約・加工の面でメリットがあるだろう。一方で、投資家が何を求めているのかを開示内容に反映することは、サステナビリティ専門部署のほうが優れているという。見方を変えれば、2つの部署が連携を深めることが、より良い開示の出発点となりそうだ。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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