AIで高まる「データ・イン・モーション」の重要性 データ基盤構築に欠かせない3つの視点と設計思想
第3回:リアルタイムデータ基盤はどう設計すべきか 論理統合とデータ・イン・モーションの実践
物理集約型アプローチの限界と現実
従来、データ活用の一元管理を目指すとき、最初のアプローチは“中央集権的”な物理集約でした。データレイクやデータウェアハウスをクラウドなどに構築し、あらゆるシステムのデータを一ヵ所に集約管理しようとする考え方です。
このアプローチは、単一の環境内でデータガバナンスやセキュリティポリシー、アクセス権限を一元定義できるため、一見すると理想的です。特に、厳格な統制が求められる金融機関や公共機関などでは魅力的な選択肢に思えます。
しかし、すべてのデータを一ヵ所へ集約・移行することは容易ではありません。
企業には長年運用されている基幹システムなどのオンプレミス環境が残っており、現場では多様なSaaSやクラウドが利用されています。これらを一つのプラットフォームへ集約・再構築しようとすれば、多大な移行コストと長期間のプロジェクトを要し、途中で挫折するケースも少なくありません。
つまり、「データを物理的に一ヵ所へ集めなければガバナンスが効かない」という従来の前提そのものが、現在のマルチ・ハイブリッドクラウド環境における最大のボトルネックとなっているのです。
「データ・イン・モーション」という考え方
そこで、近年あらためて注目されているのが「データ・イン・モーション」という考え方です。
データ・イン・モーションでは、必ずしもデータを一ヵ所へ集約することを前提としません。むしろ、データが存在する場所はそのまま維持しながら、必要なデータだけを必要な場所へリアルタイムに流通させることを重視します。
特に、AI活用の文脈ではデータを必要以上に移動させず、データが存在する場所で推論・分析を実行するアプローチが重要になりつつあります。データ移動にともなうコストや遅延、さらにはガバナンスやデータ主権への対応が求められる中、こうした考え方への関心が高まっています。
従来のアプローチが「データをどこに置くか」を中心に考えていたとすれば、データ・イン・モーションは「データをどう動かすか」を中心に考えるアプローチだといえます。そして、この考え方は現在の企業環境と非常に相性が良いでしょう。
なぜならば、多くの企業は今後もマルチ・ハイブリッドクラウド環境を前提とした運用を続けるからです。すべてを一つに統合するよりも、分散した環境を前提にしながらデータを連携させるほうが現実的なケースも少なくありません。
また、新しいAIサービスや分析基盤が登場した場合でも、データの流れを接続することで柔軟に対応できます。変化しつづける環境への適応力という点において、データ・イン・モーションは大きな価値をもっています。
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吉田 栄信(ヨシダ エイシン)
Cloudera株式会社 ソリューションズ エンジニアリング マネージャークラウド、ビッグデータ、データガバナンス、PaaS、Webアプリケーションなどの分野で、アーキテクチャ設計や実装に携わってきたソリューションエンジニア。2019年6月にCloudera株式会社へ入社。入社以前は、DXCテクノロ...
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