アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は2026年8月20日、「フロンティアAI時代のセキュリティとガバナンス」に関する記者会見を開催。生成AIやフロンティアAIの著しい進化にともない高度化するサイバー脅威の最新動向を提示しながら、企業や公的機関が構築すべき次世代の防御アーキテクチャおよびデジタル主権への対応方針を共有した。
同社 執行役員 パブリックセクター技術統括本部長の瀧澤与一氏は、まずフロンティアAIがサイバー攻撃の設計や実行にあたえるインパクトについて解説。攻撃者がAIを用いて脆弱性の探索から悪用コードの生成までを高速かつ自動で実施する「悪用速度の崩壊」がすでに始まっているという。
また、フロンティアAIの登場がサイバー脅威の領域に与えた構造的な変化について、ソフトウェアの脆弱性が公開されてから実際の悪用コードが実戦投入されるまでの平均時間は、2018年時点で2~3年だったのに対し、2024年には5日へと短縮、2026年現在は約20時間にまで狭まっているという。これに対して、企業の一般的なシステムにおいて脆弱性を検出してから修正プログラム(パッチ)の適用を完了するまでにかかる平均期間は32〜38日程度を要しており、防御側の対応スピードが大幅に遅れている。
「過去のセキュリティ対策では、脆弱性が発見されてから実際の攻撃に至るまでに、数日から数週間の猶予が存在しましたが、フロンティアAIの台頭によってそれは事実上消失しました。人間が目視でコードを分析し、手作業で対処を行う運用では、このスピード変化に対応することは不可能。防御側も『マシンスピード』で自律的に検証と修復を回す仕組みを整える必要があります」(瀧澤氏)
加えて、AIツールの普及が高度な攻撃手法の参入障壁を著しく引き下げている点も重視された。従来であれば、複数言語でのカスタム攻撃ツールの開発や段階的な侵入手順の策定を行うには、高度な技術をもつ攻撃チームや莫大なリソースが必要だったが、生成AIによって少人数の攻撃者でも容易に実行可能となっている。
そのほか、中国系脅威グループによる脆弱性公開当日の即時攻撃や、ロシア系脅威グループによるエネルギーセクターなどの重要インフラへの長期的潜伏といった国家主導の攻撃例が示すように、高度なゼロデイ脆弱性だけでなく、設定ミスや弱いパスワードといった基本的な不備を狙った自動化攻撃が地球規模で拡大しているとのことだ。
こうした脅威に対抗すべく、AnthropicはAWSなどの主要IT企業とともに業界横断コンソーシアム「Project Glasswing」を設立し、サイバー機能に特化したフロンティアAIモデル「Claude Mythos Preview」を用いた重要インフラやOSSの脆弱性探索を実施している。すでにパートナー全体で10,000件を超える深刻度の高い脆弱性が特定されているという。たとえば、Cloudflareは重要システムにおいて2,000件の脆弱性(うち400件は高・重大)を発見している。
また、このような脅威の急増を受けて、金融庁および日本銀行が2026年5月22日付で「フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応」に関する要請を発出。経営層の直接関与や優先ITシステムの特定、技術負債の解消、パッチ適用プロセスのリスクベース化などを各金融機関に求めた。
急速に深刻化する脆弱性過負荷やインシデントリスクに対する課題解決としてAWSが発表したアプローチが、自律型セキュリティフレームワーク「AWS Continuum」およびその中核を担う「AWS Security Agent」の実装だ。
同ソリューションは、従来の監視ツールのように単に警告を発するだけでなく、優先順位付け、悪用可能性の検証、修復策の提案・実行といった一連のライフサイクルを自律的に高速回転させるシステム。中には3つのエージェントが備わっており、コンテキストグラフの分析や重要資産ベースのスコアリングなどを行う「優先順位付けエージェント」やインフラ分析などを通して脆弱性の悪用可能性を検証する「検証エージェント」、パッチ生成などを行う「修復エージェント」が機能している。
これによって、従来は外部業者への委託も含めて数週間から数ヵ月を要していたペネトレーションテストが数時間で完了可能となり、開発初期段階からリスクを排除するシフトレフトが実践できるように。さらに、高度な監視センサーと自動対応機能を備えた「MadPot」やニューラルネットワークを活用した「Mithra」、内部脅威インテリジェンスツール「Sonaris」などを活用し、先回りの脅威検知・対応を実現するとのことだ。
そのほか、会見ではデジタル主権および経済安全保障推進法への対応策についても触れられた。瀧澤氏はデジタル主権の概念をデータレジデンシー、運用アクセスの制限、レジリエンス、独立性の4要素に整理し、欧州と日本における要求水準の違いを分析した。
欧州では、法制度の衝突から「AWS European Sovereign Cloud」のような物理的に分離された専用基盤が構築されているが、日本市場では「クラウド・バイ・デフォルト原則」やISMAP(Government Information System Security Management and Assessment Program:政府情報システム安全管理監理制度)などの国内認証に準拠しつつ、東京・大阪の既存リージョンに暗号化やアクセス制御などのガバナンス機能を組み合わせる協調型モデルが有効だという。この運用主権を「AWS Nitro System」が支えており、ハードウェアおよびファームウェアの設計レベルでオペレータアクセスを遮断するゼロオペレータアクセスを実現しているとのことだ。
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