保守切れRHEL約200サーバを「そのまま」使い続ける──みずほ銀行がSUSE MLSを“戦略的ブリッジ”に選んだ理由
「SUSE Summit Tokyo」レポート
レガシーOSの保守切れにどう向き合うか──。SUSEが東京で開催した年次カンファレンス「SUSE Summit Tokyo」に、みずほ銀行 プラットフォームエンジニアリング部 ディレクターの森圭司氏が登壇した。同行は、保守期限を迎えるRHELサーバ約200台に対し、OSを更改せずSUSEの「Multi-Linux Support(MLS)」でセキュリティパッチの提供を受け続ける道を選んだという。「MLSは単なる保守延長ではなく、次世代基盤への移行ロードマップを主体的に描くための戦略的ブリッジ」と語る森氏の講演を、SUSEソフトウエアソリューションズジャパンの志方公一氏による日本市場戦略の講演とあわせてレポートする。
「ベンダーロックイン」から「デジタル主権」へ──SUSEが見る日本企業の2つのテーマ
みずほ銀行の講演に先立ち、SUSEソフトウエアソリューションズジャパンでソリューションアーキテクトを統括する志方公一氏が登壇した。志方氏は、日本の顧客との対話から浮かび上がるテーマを「ITのコストコントロール」と「イノベーション──ITの成長戦略ツール化」の2つに整理した。
コストコントロールの筆頭に挙げたのがOSのメンテナンスだ。2025年6月に政府が重要インフラの安全基準策定指針を改定し、金融など重要インフラ事業者に厳格な運用を求めたことに触れ、「お客様には今、セキュリティにものすごいプレッシャーがかかっている」と指摘。AIが古い脆弱性を組み合わせてシステムに侵入できることが実証された事例にも言及した。OSをアップグレードしたくても、古いシステムでは費用面から難しい。そこでSUSEは、サポート終了(EOL)を迎えたRed Hat Enterprise Linux(RHEL)に対し「今お使いのバージョンのままで大丈夫、コンバージョン(移行)の必要はない」という形でサポートを提供しているという。
もう1つの重荷がVMwareだ。2023年11月の買収以降、「ライセンスコストの極端な上昇や、『もう更新できません』と伝えられたという声を聞いている」と志方氏。プロプライエタリ製品ゆえにベンダーから逃げられない状況を脱するにはオープンソース技術への転換が必要だと説き、SAP認定を受けたオープンソースの仮想化基盤を提供するのは「私の知る限りSUSEだけ」と胸を張った。
講演の締めくくりに持ち出したのが「デジタル主権」という言葉だ。2022年にRHEL互換サポート「SUSE Liberty Linux」を発表した際は、「ベンダーロックイン」のリスクを訴えてもなかなか響かなかった。しかし2026年の今、デジタル主権という言葉に言い換えると「共感、納得、興味という反応が返ってくる。状況は非常に変わった」と手応えを示し、オープンソースの精神で日本企業に貢献していく姿勢を強調した。
保守切れ後もパッチ提供を受けられる「MLS」という選択肢
続いて登壇したみずほ銀行 プラットフォームエンジニアリング部 ディレクターの森圭司氏は、勘定系システム関連のプロジェクトに10年以上従事した後、複数の行内基盤の更改プロジェクトを経て、現在はプラットフォームの企画・運営や導入ソリューションの選定を担っている。「最近はピザづくりに没頭している。そのようなキャラクターだと思って聞いていただければ」と会場を和ませてから、本題に入った。講演タイトルは「SUSE MLSをブリッジにしたレガシー基盤のモダナイゼーション──次世代共通プラットフォームへの橋渡しとロードマップ構築」。冒頭で森氏は、最も伝えたいメッセージをこう明言した。「MLSは単なる保守延長ではなく、脆弱性対応を続けながら、次世代基盤への移行ロードマップを主体的に描くための戦略的ブリッジである」
SUSE Multi-Linux Support(MLS)は、サポートのプロバイダーをSUSEに変更するだけで、既存のRHELやCentOSに対する保守サポートを受けられるサービスだ。移行作業や複雑な契約は不要で、ソースコードとバイナリは100%の互換性を持ち、カーネルABIの整合性を保証するためのテストも実施済みとされる。保守期限が切れたバージョン(RHEL 7.1〜7.8など)であってもサポート対象となり、セキュリティパッチの提供を受けられる。
「保守期限が切れても、OS更改をすることなく、現行環境を維持しながらパッチ提供を受けられる契約上の選択肢を持てる。ここが非常に有意義だと感じたポイント」と森氏は説明する。個別パッチの提供はCVEごとの該当性や影響度などを踏まえて判断される仕組みだが、「確実に提供していただける契約であり、非常に素晴らしいサービスだと感じて導入に至った」という。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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