AI導入を仕切る「CPMAI」
セッション3「漸近する知能爆発時代、包摂的イノベーションを立ち上がらせよう」の大西氏は、化学の研究員からIT業界に移った経歴を持つ。今はサービス開発や組織開発、BPR(業務改革)のコンサルティングを手掛けている。
最初に紹介されたのが「CPMAI(Certified Professional in Managing AI)」だ。AIを導入するプロジェクトの進め方をまとめた枠組みで、研修と試験のセットで899ドル(約14万円)。大西氏自身も1度落ち、2回目で合格した。「ルールやフレームワークなしで進めると、野良エージェントが乱立しかねません」。
進め方はビジネスの理解から始まる。投資に見合う効果が見込めるか。そもそもAIを使うべきか。次はデータの理解で、AIに入れるデータの流れを作れるか、質は足りるかを確かめる。
ここに「ゲート」が置かれる。進めるか、やめるかを決める場所だ。効果が出ないと分かれば、そこでやめる。
その後はデータの下ごしらえ、そして開発へ。モデルを一から作るのではなく、すでにあるモデルでエージェントを作るのが今の主流だという。求人の一次選考をAIに任せる場合の偏りといった倫理面も、ゲートで確かめる。
運用が始まってからも、入れるデータの質が変わると答えの質も変わる。この「ドリフト」を見つけながらサイクルを回していく。
PMBOKガイド第8版は「価値」を先頭に置いた
PMBOKガイドは第6版まで、コスト、納期、品質といった管理の話が中心だった。「何か物足りなさがありました」と大西氏は率直に振り返る。
第7版から「価値」の記述が重みを増し、最新の第8版では、価値を届けることこそプロジェクトの目指す姿だと冒頭で定義されている。第7版の12原則は「多すぎる」という声もあり、第8版では実践に寄せた6原則にまとめ直された。
価値の中身も広がった。形のある価値と形のない価値が書き分けられ、従業員のウェルビーイングやブランド認知度も価値として扱われる。関わる人の範囲も、外のコミュニティや次の世代にまで広がった。
サステナビリティも、問題が起きてから補償で手を打つのではなく、そもそも問題を起こさない設計を最優先する順序が示されている。
後半で大西氏が挙げたのが、GE(ゼネラル・エレクトリック)とシーメンスの対比だ。経営のお手本とされたGEは3社に分かれて解体された。一方でシーメンスは、事業の軸を環境や脱炭素に移して時価総額を大きく伸ばした。ただし順序が逆ではない、と大西氏は念を押す。目的はあくまで事業を持続・成長させることで、環境課題への取り組みはそのための手段だという。サステナビリティは経営の脇にあるものではない、と同氏は強調する。
もうひとつ手渡されたのが「漸近未来マップ」だ。同じ「AIの話」でも、議事録の要約に生成AIを使ってよいかという問いと、5年後にPMの仕事が置き換わるのかという問いでは、抽象度も時間軸もまるで違う。抽象度(具体・中間・抽象)と、現在からの距離(現在・漸近未来・その先)で議論を座標化し、「いま、どこの話か」を先にそろえる。座標が合えば、AIをめぐる議論はかみ合うという。
最後に挙げたのが、リスクを見る立場から最も恐れているものだ。技術が進むことで富が偏り、社会から人がこぼれ落ちて分断が生まれること。
「分断が生じると、包摂的イノベーションが不可能になります。人類の行く末は、一つひとつのプロジェクトの判断にかかっています」
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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