「知」に偏った日本に、「情」と「意」を取り戻す
セッション2の萩本氏は、オブジェクト指向の方法論づくりから要求開発へと歩み、2008年から「匠Method」を作り始めた。Social Value Labは、2024年に未来戦略室の前川直也氏に声がけして設立され、匠Methodも習得手法の一つとされている。
セッション1の塩田氏とは、米フロリダで開かれたIIBAのイベントで匠Methodによる社会課題解決事例を一緒に発表した間柄でもある。
匠Methodのいちばん上に置くのが「知・情・意」の3つの思考だ。哲学者カントの3分類にちなむ。「意」は未来に向けた強い思いと方向性、「情」は関わる重要な人にどんな価値をもたらすかということをシーンとして作成、「知」は筋道を立てて考える力すなわち論理思考によりターゲットの事業をデザインする。
「日本人は徹底して仕事をする一方、何のためにやっているのかが曖昧になりやすい。だから感性思考的な『意』と『情』は仕事の外のものだと思い込んでいる人が多い。この『意』と『情』を取り戻し、再確認し、発信・提示する。つまりは『自分を取り戻すための方法論』として匠Methodを作った」と萩本氏は語る。
なかでも重視するのが「感じる力」だ。萩本氏はその理由を芸術に答えを求めた。音楽も絵も、作者がどんな時に作ったのかが分かると、いっそう美しく感じられる。製品も同じで、哲学が宣言され、デザインがそれに見合い、エンジニアリングともかみ合っている。
「嬉しい」を書かせて、手段を確かめる
作業は「見える化」に落ちる。「情」の側では、ビジネスステークホルダー(関わる人)を今と未来の両方から書き出す。実際のプロジェクトでは100〜150人に達することもある。これを『ステークホルダーモデル』という図で表す。
そして、そこから重要と思えるステークホルダーを10〜20人選び、そのプロダクトが成功した5年後、10年後に、「その人がどんな時に、何によって、どう嬉しいのか」を、その人が発信する言葉として書いてもらう。これを『価値分析モデル』という図で表す。
ここで萩本氏は箇条書きではなく「魅力的な言葉にすること」を求める。状況・手段・価値の形で書かれた未来の一文が、そのまま手段の検証になるからだ。
「意」の側では、社会に対してどんな存在でいたいかを書く。ビジョンは夢物語でもよいが、コンセプトでは3つの大きな目標を具体的に書き込む。これにキャッチフレーズ、デザイン等を加えて『価値デザインモデル』という図で表す。そして両者をつなぎ、「知」の目標として『要求分析ツリー』という図へ落とし込む。
なぜ価値から入るのか。戦略から進めると視野が狭くなり、これまでのやり方から抜け出せない。「価値から考えれば視野が広がり、それを基に戦略に落とし込む方法さえあれば最適なアプローチ、最初に価値からやることで、みんながウキウキ・ワクワクしながらできる」というのが氏の説明だ。
BABOKとの関係にも触れた。匠Methodの価値・要求・活動・業務という単位と、BABOKの「チェンジ」「ソリューション」「ニーズ」が驚くほど重なるという。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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