既存資産を活かしながら、AI活用を加速させる「3つの観点」
佐子氏:データ活用基盤、データ連携基盤、そしてナレッジ活用基盤を連携させていくためには、構造化データと非構造化データをうまく組み合わせることが求められます。ERPやCRMに蓄積される売上、在庫、顧客情報などの構造化データの重要性はわかりやすいでしょう。しかし、メールやチャット、提案書、議事録、日報などの非構造化データには、数値だけでは分からない判断の経緯、業務上のコンテキストが含まれています。これまでのデータ活用を振り返ると、構造化データはSnowflakeのようなクラウドDWHに集約され、分析・可視化に活用されてきました。一方、AIが台頭してきた現在は、非構造化データを組み合わせることで、AIエージェントによる業務支援などにつなげることの重要性が増しています。
たとえば、経営層がAIに「首都圏の大規模プロジェクトにおいて、今期の粗利率が低下した原因と対策を教えてほしい」と尋ねたとします。粗利率の低下という定量的な事実はSnowflakeのデータから把握できますが、その背景や対策を検討するためにはGleanなどを通じてチャットや日報、顧客との折衝記録なども参照する必要があります。
数値に表れる事実だけでなく、そこに至るまでの背景・経緯を含めて活用できるようになれば、AIが業務に即した回答・提案を行いやすくなります。つまり、構造化データと非構造化データをつなぐ基盤こそが、今後のAI活用を支える重要な要素になるのです。
染谷氏:そうしたアプローチが重要になることは間違いないでしょう。ただ、AIに業務データを適切に扱わせるためには、データ構造とビジネス用語・指標の定義を結びつける「セマンティックレイヤー」が欠かせません。表データにある情報だけでは、どの項目を売上として扱い、どの条件で集計するのかといった業務上の意味を判断することは難しいでしょう。とはいえ、すべてのデータについて、指標の定義やテーブル間の関係をゼロから整備するには大きな負担がかかります。
そこで、今注目しているのがBI資産の再利用です。WebFOCUSやQlikなど、長年にわたり整備されてきたレポートやダッシュボードには、業務に即した指標の定義や計算ロジックが蓄積されています。これらの資産をそのままAIに連携できれば、セマンティックレイヤーを整備したり、AIが個別のテーブルやカラムを直接参照したりせずとも、業務上の意味に沿ってデータを利用しやすくなります。これまでのデータ活用でつくってきた資産を生かしながら、AI活用へ段階的につなげていくことが現実的なアプローチでしょう。
矢野氏:その上で、忘れてはいけないものが安定したデータ連携の仕組みです。どれだけAIやデータ分析の仕組みを整えても、必要なデータを“適切な鮮度”で利用できず、連携も安定していなければ、期待する成果にはつながりません。ナレッジ活用やセマンティックレイヤーも、基幹システムや複数のSaaSから必要なデータを継続的に取得・利用できることが前提です。
だからこそ、データ連携基盤には業務システム間で求められる正確性・安定性に加えて、AIやデータ活用で求められる鮮度・即時性が大切です。そのため、データを活用したい部署が求めるデータの内容や粒度、更新頻度を踏まえ、連携方式や運用方法を設計する必要があります。
データ活用、ナレッジ活用、データ連携を個別に捉えるのではなく、それぞれの要件を踏まえて全体を設計することが、AI活用を継続的に進めるための基盤構築には欠かせません。
染谷氏:かつては、アシストでも製品ごとに組織が分かれ、全体最適な基盤を構築するためには、部門をまたぐ社内調整に時間を要することもありました。現在は、データ活用基盤、データ連携基盤、ナレッジ活用基盤という提供価値を軸とした体制へ移行しています。これにより、AI活用の構想から実装、運用・定着まで、領域をまたいで一貫して支援できるようになりました。
矢野氏:組織の垣根を越えて動くという文化は、今やアシスト全社に広がっています。データ連携の相談を受けたとしても、データ活用基盤やナレッジ活用基盤に課題があれば、染谷や佐子の部隊と連携しながら提案しています。
佐子氏:生成AIの登場で、企業のITリーダーが検討すべき選択肢は広がりました。だからこそ、個別製品の導入だけでなく、自社の業務やデータ、既存システムを踏まえて全体像を考えることが重要です。アシストは多様な製品と顧客支援の経験を生かし、実行可能なアーキテクチャをともに考え、実装・運用まで支援していきます。
信頼できる構造化データを整備し、必要なデータを連携し、非構造化データに含まれる業務のコンテキストも活用していく。そのための基盤を全体最適として設計・運用することがAIを単発の導入で終わらせず、業務や意思決定に生かすための土台となるでしょう。

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- この記事の著者
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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提供:株式会社アシスト
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