総務省が1300億円超投じてDCを地方分散 「AIに強いインフラ/災害時もつながるネット」実現の戦略
総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 基盤整備促進課長 平松寛代氏 講演レポート
令和12年度までに累計1300億円超をデータセンター地方分散に投資
第1の柱となるデータセンター(DC)と電力インフラの一体的な整備を図る取り組みの一つが「ワット・ビット連携」だ。現在、国内のDCや国際海底ケーブルの陸揚局は、東京圏や大阪圏、および房総半島や志摩半島周辺に集中している。平松氏は「過度の集中は大規模災害時のレジリエンス確保において深刻なリスクとなるだけでなく、電力供給の面でも限界を迎えつつある」と現状の課題を提起した。
この課題を解決するため、総務省はDCを地方へ戦略的に分散配置する方針を打ち出している。同氏は特に「レジリエンスの確保」「脱炭素化」「地域活性化」の3つの観点で、地方への分散は重要だと強調。その際、DC単体ではなく、受電設備や再生可能エネルギーなどの電力インフラ、ならびに海底ケーブルやIX(Internet Exchange)といった通信インフラを一体的に整備するワット・ビット連携が基本軸となる。政府の官民を交えた懇談会では「ワット・ビット連携官民懇談会取りまとめ1.0」が公表され、電力・通信・DC事業者が一体となって迅速に対応する体制が整えられているところだ。
具体的な施策として、総務省はデジタルインフラ整備基金などを活用し、地方でのDC建設や海底ケーブルの地方陸揚げに対して財政支援を実施している。令和7年度補正予算で400.0億円、令和8年度当初予算で209.4億円の予算措置が講じられ、令和12年度までの累計予算額は1329億円にのぼる見込み。既に石狩市、白河市、松江市、福岡市、美浜町などの地方におけるDC整備7件の交付決定や6件の採択が完了しており、さらに国際海底ケーブルの分岐支線を九州や北海道へ陸揚げする事業も採択され、ルートの多様化が進められているところだ。
また、政府の「GX実行会議」と連携し、2030年代前半に向けた「GX戦略地域」の制度枠組みにおいて「データセンター集積型」の類型を設定。これにより、ギガワット級の出力をもつ大規模なDC集積拠点を地方に複数造成する選定作業が進められている。平松氏は「足元のDC需要に対しては、既存の電力インフラを前提に地方分散を進めつつ、将来的には通信と電力を高度に制御する運用手法を導入する」と見通しを語る。
具体的には、APN技術を活用することで、晴天時などに発生する地方の再生可能エネルギー余剰電力を有効利用し、時間や地域に応じてDCの計算需要を柔軟に移行させるワークロードシフトの実現を目指す。これにより、電力系統の需給ギャップを解消しながら、高度なAIサービスを全国で安定的かつ効率的に利用できる環境が創出されるという。
「日本はAPN技術で優位に」Beyond 5G、量子暗号の社会実装に向けたアプローチ
AI社会の基幹インフラとして位置付けられるAPNは、従来の電子処理を排し、ネットワークの全区間を光信号のまま伝送する技術体系だ。平松氏は「APNは超低遅延、大容量伝送に加え、従来比で大幅な省電力化を可能にする技術。日本が技術的優位性を保持している重要分野だ」と説明する。総務省は2028年度までに複数事業者間の相互接続技術を確立し、2030年ごろには大都市圏や多様なユーザー拠点においてAPNの広域的な利用を可能にする計画を進めている。
実用化に向けた環境整備も加速している。総務省は「APNイノベーションハブ」と呼ばれる実証環境の構築に向けて70億円の予算を措置し、2026年度中の整備を目指して官民連携による製品挙動や相互接続性の検証を後押しする。この環境を活用することで、離れた小規模分散DC同士をAPNで接続し、全体でひとつの仮想的な大規模DCとして統合運用する技術実証が進められている。スマート工場、自動運転、遠隔医療、金融取引など、極限の低遅延と高信頼性が要求されるユースケースの創出が期待されるところだ。
さらに、2030年代の導入が見込まれる次世代情報通信基盤(Beyond 5G/6G)に向けては、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)に設置された基金を活用して、令和7年度補正予算で239億円、令和8年度当初予算で115億円を計上し、研究開発や国際標準化を一体的に支援している。
また、解読が不可能な安全性を備えた量子暗号通信についても、2026年度から東名阪三大都市圏を結ぶ量子暗号通信ネットワークを構築しており、2027年度以降、医療・創薬、金融、電力、宇宙などの幅広い分野でのユースケースの実証・拡充を進め、2030年の社会実装を目指す。宇宙通信分野においては内閣府や文部科学省、経済産業省などと連携した宇宙戦略基金を通じて民間企業やスタートアップなどの技術開発を支援している。
「これらの基幹技術について日本発の標準を確立し、技術的自立性の確保とグローバル市場における国際競争力の強化を図っていきます」(平松氏)
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