MUFGのAI PoCを再建したオントロジー×ナレッジグラフ活用 非IT部門が2万件の知見をデータ化
マニュアルの言葉を“AI-Readyなデータ”に。あいまいさを排除した次世代コンテキスト構築
2万件のトリプルで終わらない、続く知見の拡充
この「オントロジー×ナレッジグラフ」の構築は、生成AIだけでは難しかったAIフローチャートの品質向上に大きく貢献した。何より整備した2万件のトリプルは、三菱UFJ銀行の培われてきた集合知でもある。今後さらに数を増やしつづけ、全行規模の集合知へと進化させることも考えられる。
また、冒頭で述べたインドの事務センターへの集約を進めるためにも、各拠点のナレッジグラフ展開を進めることが必要だ。「バックオフィスの海外事務手続きの次は、フロントの営業事務まで拡げることを視野に入れている」と、溝口氏は展望を語る。
さらに、新しい国に進出するとき、この新しい仕組みが役に立つだろう。以前は海外事業立ち上げのエキスパートが、勘と経験を頼りにやっていたようなことがこれによって容易になる。たとえば、現地の金融機関をM&Aで買収した後のプロセスで、双方の手続きがあまりにも違っていると、標準化の糸口を見つけることにも時間を要する。この仕組みがあれば、効率的に統合を進めることができそうだ。
加えて、新しい金融商品を提供する場合でも、この仕組みを利用すれば、今までよりも効率的に新しい事務手続きを追加できそうだ。発端は事務手続きの標準化だったが、現在は同じ仕組みを他の分野に応用することも考えているという。その1つがシステム開発における要件定義書やUAT(ユーザー受け入れテスト)ケース作成である。既に、三菱UFJ銀行では、第2号案件としてUATケース作成のPoCが始まっている。
こうした“攻めの展望”とあわせて、溝口氏は「守りの観点でも考えていることがある」と続ける。1つは、事務以外の分野でレジェンドと呼ばれるエキスパートたちが持つ様々なノウハウを形式知化することだ。ベテランが大量に退職する2030年問題は、三菱UFJ銀行にとっても他人事ではない。「人員数は減ったとしても、知見を組織に維持する努力を続けたい」と同氏は述べる。翻訳や要約などで便利に使うだけでなく、業務の知見を学ぶことで、AIはもっと活躍できる。それができる仕組みを、ユーザー部門主導で構築できたことは大きな成果だろう。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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