AIforceだけでない、「Dreamforce 2026」で明かされたAgentforceの進化
Salesforce初となる独自モデル「Koa」の提供
単なる名称変更ではない「Agentforce」のアップデート
「SaaS is Dead」の議論が活発になったきっかけともいわれるAnthropicのClaude Coworkから、Agentforceが利用できるようになった意義は大きい。そして、Agentforce自体も変わった。エージェント構築に時間をかける必要がなく、すぐに顧客のビジネスに貢献できるように8種類のJob-Readyエージェントが用意された。その内訳は、マーケティングのPiper、営業のHunter、カスタマーサポートのCasey、ITサービスおよび従業員サービスのPaige、サプライチェーンのMarshall、ショッピングアシスタントのCarter、カスタマーオペレーションのFin、フィールドサービスのFelixだ。それぞれのエージェントが名前を持ち、担当領域で働く人たちの同僚として提供される。
出典:Salesforce
エージェントにドメイン知識をゼロから教えることは大変だが、Agentforceは違う。各エージェントには、それぞれの領域の仕事に必要なスキルが予め備わっており、その企業のビジネスコンテキストを理解した上でタスクを実行できる。つまり、導入初日から使える“Out-of-the-Boxエージェント”として提供され、使いはじめてからもドメイン知識を学習してくれる設計だ。また、(Salesforceにおける)エージェントの動作を記述するオープンソース言語「Agent Script」を用いることで、エージェント特有の確率論的な動作だけでなく、決定論的なルールを規定し、意思決定とアクションの実行方法も拡張できる。
カスタマーゼロとして、セールスフォース社内では既にこれらのエージェントを日常的に利用しているようだ。たとえば、Caseyがhelp.salesforce.com上で500万件のサービス対応を解決した実績がある。そして今回、大きく取り上げられたのが2026年11月に米国での一般提供開始(日本での提供開始時期は未定)を予定している営業担当者向けHunterだ。このエージェントを利用するときには、実現したいビジネスゴールを意識することが重要だ。営業担当者が自分の環境でHunterをオンにすると、名前の通り、案件獲得に向けて作業計画を立て、ゴールの実現に向けて動き始める。
特定顧客向けの提案書のドラフト作成を頼むような、すぐに結果を返してくれるエージェントとは異なり、Hunterはより時間のかかる営業活動を全般的に支援してくれる。これまでのセールスフォースでも、Agentforce for Salesのようにユースケース単位でエージェントを提供してきたが、今回は単なる名称変更にとどまらず、四半期決算のリズムにあわせて活動する営業担当者の業務にあわせたエージェントとして生まれ変わった。
「ロングホライズン推論」が可能にした、AIエージェントの運用
この背景には、LLMの推論能力の向上がある。AnthropicやOpenAIでは、モデルの大規模化に留まることなく、推論の持続力を強化する方向で強化が進んでいる。組織で最も価値の高い仕事とは、「試行→失敗→原因特定→修正→再試行」を繰り返す複雑なものだ。このようなタスクをLLMに任せる場合、長時間にわたって動き続ける能力があれば済むというものではない。過去に何をしたか記憶する能力がなければ、同じ失敗を繰り返す。また、状況の変化に応じた修正能力がなければ、求める成果は得られない。こうした時間がかかるだけでなく、同時並列処理ができない複雑なタスクは「ロングホライズンタスク」と呼ばれる。
Agentforceのプロダクトキーノートでは、「このような複雑なタスクをAIエージェントに任せるには、これまでとはまったく異なるロングホライズン推論のためのランタイムが必要になる」との説明があり、以下3つの機能を備えたランタイムでHunterが動くことが明かされた。
- メモリー:コンテキストと進捗状況を保持する
- 持続的な実行力:計画を長期間にわたって保持し、状況の変化に応じて計画を微調整する
- 動的ステアリング:ユーザーからのフィードバックと指示に基づいて、エージェントの動作を調整する
出典:Salesforce
これまでSales Cloudユーザーは、エージェントにメールの文案や提案書ドラフトを作成してもらえた。Hunterではこれを一歩進め、案件獲得に向けたプロセス全体を伴走してくれる。このときビジネスゴールの設定が起点になるものの、生成AIツールを使うときのように、担当者が直接ゴール目標を入力する必要はない。Hunterを起動さえすれば、営業担当者のプロファイルから設定するべきゴールの候補が複数提示されるからだ。たとえば、「第3四半期末までに、340Kドル規模の案件のうちリスクの高い12件との関係を強化したい」というゴールを選ぶと、達成に向けて必要なタスクの一覧を期限付きで表示してくれる。このリストを担当者自身が調整・承認すれば、計画が完成する仕組みだ。その後、Hunterはタスクの進捗と状況の変化に応じて計画を更新してくれる。
数ヵ月のような長期間にわたり、営業担当者の仕事を裏側で支えていくことになる新しいランタイムは、ゴール達成に向けて継続的に改善していく仕組みであるフィードバックループを運用するための環境として提供されるものだ。“ロングホライズン推論”ランタイムを利用するAgentforceは、Hunterが最初のエージェントになる。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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